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Wednesday, April 1, 2020

世界一の富裕国、なぜマスクが手に入らないのか - Wall Street Journal

米国はマスクなど医療用品の調達に奔走している

Photo: jeenah moon/Reuters

――WSJの人気コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」

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 米国が手術用マスクやN95防護マスク、人工呼吸器の調達に奔走する姿は、入り組んだサプライチェーン(供給網)に重要な医療用品を依存する欠点を浮き彫りにし、グローバリゼーションという通念にまたもや難題を突きつけている。米国では31日、全米がほぼ封鎖状態にある中でも、新型コロナウイルスの感染症による死者は10万~24万人に上る可能性があると発表された。世界で人口が最も多く、人口密度も高い中国が発表した新型コロナの死者は、4000人を下回る。

 公衆衛生がこれほどの規模の大惨事に至るには、常に1つ以上の原因がある。中でも明白なのは、米行政府が何週間にもわたって脅威の深刻さを否認し、検査の拡大で後れを取ったことだ。ただ、多くの米国人にとって最も不可解なのは、世界一富裕で最高のテクノロジーを誇る国家がなぜ、市民や医療従事者に命を守る医療機器を供給できないのかということだ。

 感染流行対策への投資が長年、不足していたのは大きな要因となる。だが、中国とインドのメーカーに大きく依存する製薬業界のように、世界のサプライチェーンへの依存も、医療用具の調達に苦しむ欧米の病院が直面する状況を困難にしている。

 モルガン・スタンレーによると、中国は世界の医療用マスク生産能力の85%を占める。新型コロナウイルスの感染が広がる前には50%だった。医療従事者が着用するN95保護マスクの微粒子フィルターに使われるポリプロピレン繊維も、中国が主な製造国となっている。国連のデータによると、2018年には中国が不織布の突出した輸出国となり、世界の輸出市場の18%を支配していた。ポリプロピレン繊維もこうした不織布に含まれる。米国も大量に製造しているものの、世界最大の輸入国となっている。

 ここ2カ月で需要が急増し――最初に急増したのは中国だ――世界中でマスクと原料を確保する動きが広がった。ドイツや中国などが医療用具の輸出を制限したことも、不足に拍車を掛けた。最近の例では、モントリオールのマスクメーカー、メディコムの中国工場が現地で原材料を調達できなくなった。中国当局が国内で使用するマスクの生産に回したためだ。米厚生省は3月上旬、1年間にわたり感染流行と戦う場合に必要な医療用マスクについて、わずか1%程度しか在庫がないと述べていた。

 新型コロナの重症患者の呼吸を助けるために必要な人工呼吸器も、たいてい世界各地から調達する部品で製造される。ハミルトン・メディカルの最高経営責任者(CEO)は先週の米経済誌フォーチュンのインタビューで、ルーマニアが医療物資の輸出を制限したため、人工呼吸器に必要な加湿器部品の調達が一時的に阻まれたと述べた。その他のチューブやマスクなどの部品は中国あるいはそれ以外のアジア諸国から調達することが多いという。

 一方、香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストによると、中国の人工呼吸器メーカーはタービンやセンサーといった部品を欧州から調達しにくくなっている。中国では感染が減る中、工場の生産がようやく加速しつつある。ところが航空輸送能力が激減し、欧州の労働者の間でも、米国と同様に自宅待機が広がっている。ゼネラル・モーターズ(GM)やフォード・モーターなど米自動車大手は人工呼吸器の生産拡大を支援すると表明したが、特殊部品を確保できなければ、貢献度も限られる。米集中治療学会(SCCM)によると、米国には現在、約16万台の人工呼吸器があるが、多くは既に使われている。米病院協会(AHA)は、感染流行中に全米で100万人近い患者が人工呼吸器を必要とする可能性があると推測している。

 3Dプリンターなど新技術も、不足分を補う一助となるかもしれない。多くの米国人が目下、ソーシャルディスタンス(人と人との距離の確保)を実践しており、運が良ければ、最悪のシナリオの一部は回避できるだろう。

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 だが、感染流行が終息する際には、重要医療物資を巡る複雑な世界的サプライチェーンの大幅見直しという、持続的な変化が引き起こされる可能性がある。トランプ政権が世界の貿易に挑んだ闘いは既に、自動車や携帯電話といった消費者向け製品に関し、低コストな海外委託や在庫抑制に対する政治的リスクを浮き彫りにしている。今ではそうした弱点がもう一つのセクターに浮上し、はるかに多くの人的損失をもたらす恐れがある。

 多くの米国人は――恐らく米政府も――高コストな重複が組み込まれた、より信頼性の高いサプライチェーンのために支出を増やすことに、前向きになるかもしれない。

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