マスク姿でアメリカ国旗を背にするデレク・ワシントンさん。看護師として、ニューヨーク州イーストメドウにあるナッソー大学医療センターで勤務している。2020年5月12日。
- 「マスク着用問題」が、アメリカの保守とリベラルの間に対立を引き起こしている。
- この現象について2人の社会心理学者は、現在の党派性の強い政治環境と、トランプ大統領がマスクに否定的なメッセージを発し続けていることが原因だと説明する。
- また、類例として気候変動をめぐる論争を挙げ、1990年代には政治的な問題ではなかったものが、共和党がアジェンダに組み込んだことで強い党派性を帯びるようになったと指摘する。
- 「国がこのように分断されるのは健全ではない」と社会心理学者は述べている。
新型コロナウイルスの拡散を防ぐためのマスク着用が、アメリカでは対立の火種になっている。
マスクの着用拒否をめぐって乗客が飛行機を降ろされたり、暴力事件が発生したりといったトラブルが相次いでいる。マスク着用の要請に従わない客に対してサービス提供を拒んだために、スターバックス(Starbucks)のバリスタがフェイスブック(Facebook)上で侮辱されたり、レストランチェーンのワッフル・ハウス(Waffle House)の従業員が銃撃されたりといった事件も起きている。
世界中の専門家が推奨するマスクの着用をめぐって、どこよりも顕著な政治的分断が起きているとみられるアメリカでは、リベラル派はマスク着用義務を順守し、保守派は着用を拒む傾向にある。
ピュー・リサーチ・センター(Pew Research Center)が2020年6月末に公表した調査結果によると、「公共の場ではマスクを常に着用すべきだ」と答えた者は、民主党員または民主党支持者では63%を占めたのに対し、共和党員または共和党支持者では29%にとどまった。
この問題について、Business Insiderは2人の社会心理学者に話を聞いた。彼らによると、問題の背景にはアメリカにおける分極化した政治情勢がある。またドナルド・トランプ米大統領が最近までマスクを着用せず、マスクに否定的なメッセージを発していたことが影響しているという。
カリフォルニア大学アーバイン校の心理学教授、ピート・ディット(Pete Ditto)は次のように述べた。
「現在のアメリカは、2つの陣営が互いを激しく憎みあい、情報の受け止め方にまで対立が及んでいる。単に『おまえたちが気に入らない』というだけでなく、『おまえたちの価値観が気に入らない。おまえたちの示す事実も気に入らない』という状態だ」
「これほど激しい分極化は、他国にはみられない」と彼は付け加えた。
トランプ大統領のマスク拒否が影響
ニューヨーク大学の心理学准教授エリック・ノウルズ(Eric Knowles)は、マスクがこれほど激しい対立を引き起こしているのは、党派的な政治情勢だけが原因ではないと指摘する。
このパンデミックが始まって以降、共和党と民主党の指導者たちは、明確な発言と行動を通じてマスクに対するアメリカの世論を形成してきたとノウルズは言う。
「トランプ大統領と共和党は、パンデミックの深刻さを矮小化し、ひいてはマスク着用の重要性を軽んじてきた。対する民主党の政治家たちは、おそらくはそれが適切な対応なのだが、パンデミックの危険性と健康に関わる行動の重要性を強調してきた」
マスク姿で工場を視察するトランプ大統領。2020年8月6日。
REUTERS/Joshua Roberts
マスクの不便さを理由に
マスクをめぐる対立のもうひとつの大きな要因としてディット教授が挙げるのは、そもそもマスクを好んで着用したい人はいないという事実だ。
「マスクを着用する不快さに目をつけ、それをいわば武器として利用し、マスクをするのは悪いことだと人々に訴える。今起きている現象は基本的にそのように説明できる」とディットは指摘する。
「片方の陣営には、さまざまな理由から、このパンデミックがさほど深刻でないと信じたい人たちがいる。彼らはそんなものに生活をかき乱されたくないので、マスクは悪いものだということにした。そして、ただ悪いだけでなく、効果がないものだということにした」
マスク姿でBlack Lives Matter(BLM)運動に参加する人(左)。対峙するのは、マスクを着けないトランプ支持者。2020年7月27日。ミズーリ州セントルイス。
2人の社会心理学者は、マスクをめぐる対立を気候変動をめぐる論争になぞらえる。そして、気候変動も、1990年代に広く議論され始めた当初は、それほど政治的な問題ではなかったと指摘する。
気候変動をめぐる論争は、当初は「それほど分極化した政治的課題というわけではなかった。しかし共和党が、対立を煽る道具としてこの問題を利用し始め、自分たちの政治的アジェンダに絡めて、気候変動は深刻な問題でないとする姿勢を示すようになったことで事情が変わった」とノウルズは話す。
現在のマスクをめぐる対立でも、「我々すべてが直面する共通の課題、全員が団結し力を合わせて取り組むべき課題が、しだいに政治化されていくプロセスが繰り返されている」とノウルズは指摘する。
大統領にはマスク着用を促す影響力がある
ノウルズは、トランプ大統領がここへきて突然マスク支持に転じたことがいい影響となり、アメリカ全土でマスク着用の動きが進むことを期待している。CNNによると、今年の大統領選で再選を目指すトランプ陣営は、8月3日(現地時間)の夜に支持者宛てに送ったメールで、「我々全員が試してみるべきこと」としてマスク着用に言及したという。
「トランプ大統領がこのメッセージを発信し続け、公の場所で一貫してマスク着用の重要性をアピールすれば、ひとまずは党派間の分断が緩和されると期待している」とノウルズは語る。
マスク着用に反対する抗議者。
Sergio Flores/Getty
しかし、ディットはそれほど楽観的ではない。
「社会心理学の分野では、何らかの外的な脅威が人々を団結させるという指摘をしようとする長い歴史がある」として、ディット氏は次のように述べた。
「大きな危機がないときには互いに争っていたとしても、ひとたび深刻な脅威がもち上がれば、我々はひとつに団結するという考えだ。したがって、脅威が深刻化すれば人々は団結するだろうと、誰もがどこかで期待していた。しかし、現実にはそのようなことは起きていないようだ」
大統領選でさらに悪化する可能性も
アメリカ大統領選挙が11月に迫る中、ディット教授は、マスク着用をめぐる党派間の分断が今よりさらに深刻になると見ている。
「国がこのように分断されるのはまったく健全なことではない」とディットは言う。
「公衆衛生上の脅威は、政治化してはならないものの代表格だが、ひとたびそうした流れに乗ってしまえば政治化されてしまう」
政治的か否かにかかわらず、マスク着用を拒否する人がいることで、アメリカではさらなる人命が犠牲になるだろう。アメリカは、新型コロナウイルスによる感染者数、死者数ともに世界最多を記録しており、その数は今後も増え続けると見られている。
[原文:How America became a breeding ground for anti-maskers, according to social psychologists]
(翻訳:高橋朋子/ガリレオ、編集:Toshihiko Inoue)
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August 17, 2020 at 02:30AM
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