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Thursday, August 18, 2022

理想にばく進するマスク氏 裏で支える「7人のサムライ」 - 日経ビジネスオンライン

kuebacang.blogspot.com

 マスク氏の頭の中のビジョンには、優秀な人材を引き付けてやまない求心力がある。成果を出せない部下を容赦なく切り捨てるのも、目的達成に足かせは要らないからだ。なぜそこまでがむしゃらに走り続けられるのか。

■連載予定(タイトルや回数は変わる可能性があります)
・ツイッター買収問題、マスクの訴訟戦略を立案した「知恵袋」
・理想にばく進するマスク氏 裏で支える「7人のサムライ」(今回)
・元テスラCTOストローベル氏が語る「マスクとの関係」
・電池素材開発ベンチャーの米シラ バイスプレジデント カート・ケルティー氏に聞く
・「信仰者」が米国で急増中 熱狂×ユーチューブで拡散する「マスク教」
・異端のリーダーはこう生まれた 周囲を翻弄する「天使」と「悪魔」の人生
・広がるマスク流リーダーシップ 21世紀のハワード・ヒューズか

 誰もが実現不可能と捉えてきたビジネスを型破りな発想で可能にしてきた。その代表格であるテスラとスペースXの成功を裏付ける数字は、今や誰もが認めざるを得ない。

 テスラの2021年12月期通期の売上高は前年同期比71%増の538億2300万ドルで、売上高営業利益率は同5.8ポイント増の12.1%だった。22年1~3月期の営業利益率は19.2%、4~6月期は14.6%。10%を超えれば御の字とされる製造業においては高収益企業といえる。

 テスラが時価総額でトヨタ超えを果たしたことは有名だが、非上場のスペースXも負けていない。22年5月に米ブルームバーグなどが報じた記事によると、同社の評価額は同月時点で1250億ドルとなったもよう。これは時価総額で宇宙業界2位の米ロッキード・マーチンを上回る。

 マスク氏はなぜ手掛ける事業が多岐にわたるのに、無謀な挑戦を現実化して事業を成功に導けるのか。その大きな理由に、手掛ける事業のすべてが同じビジョンの上にあり、互いに関連していることがある。

 その相関関係を下の図に示した。

経営企業の相関図と関係者の役割

経営企業の相関図と関係者の役割

(写真=ベゾス氏:Blue Origin/INSTARimages/アフロ、ゲイツ氏:AP/アフロ、プーチン氏:ロイター/アフロ、カーパシー氏:San Francisco Chronicle/Hearst Newspapers via Getty Images/Getty Images、バーチャル氏:Bloomberg/Getty Images、トランプ氏:AP/アフロ、ドーシー氏:AFP/アフロ、キンバル氏:REX/アフロ、ジリス氏:AP/アフロ、ショットウェル氏:ロイター/アフロ、スピロ氏:Jemal Countess/Getty Images、マスク氏:Anadolu Agency/Getty Images)

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手掛ける領域を3つに限定

 まず踏まえておきたいのは、いずれの事業でもマスク氏が目指すのは「人類の永続的な繁栄」にある点だ。幼いころからSF小説やSF映画を好み、人類の未来に思いをはせた。1989年に出身地の南アフリカからカナダに移住し、同地や米国の大学で経済や物理、エンジニアリングを学んでいた頃から、「人類の未来に影響を及ぼす技術は『インターネット』『クリーンエネルギー』『宇宙開発』の3つ」と予見していた。

 壮大な構想の中で大きな役割を担うのが、やはりテスラとスペースXだ。マスク氏はあらゆる場所で、テスラは地球環境保護、スペースXは宇宙への人類の生活圏拡大と、役割分担していると説明している。

 2002年にスペースXを立ち上げ、テスラに出資して会長に就任したのが04年。06年に太陽光発電のソーラーシティに出資し、後にテスラ傘下に収めた。太陽光で発電した電力を電気自動車(EV)などに蓄えれば、走行はもちろん家庭の電源としても使える。スペースXでは、地球のどこからでもインターネットを使えるようにする衛星通信システム、スターリンクの運用を20年に始めた。衛星をスペースXのロケットで打ち上げられるので相性がいい。どの事業も前出の3つの技術領域に関連する。

 少し異質に見えるのが、16年に設立した地下トンネルを使った高速輸送システムのボーリング・カンパニーと、脳の機能拡張を目指すブレインテックのニューラリンクだ。前者は、テスラやスペースXと同じ「輸送インフラ」と考えれば納得がいく。だが、ニューラリンクについては、テスラが今、開発に力を入れているヒト型ロボット「テスラボット」や、市場投入が噂されているテスラの高機能スマホ「Pi」の存在を踏まえると狙いが見えてくる。ニューラリンクで開発する脳の拡張機能は、ボットやスマホの「操作手段」にしようとしているとみられる。

 すべてに共通するのは、人類が火星に移住した後の人や物の輸送や人と人とのコミュニケーションに関連していることだ。ツイッターの買収劇や暗号資産(仮想通貨)へのこだわりも、移住後を想定した「インフラ」と見ているのだろう。

 マスク氏が描くこの未来予想図ならぬ「未来実現図」は、彼を取り巻くファンたちの信仰の対象になっている。同氏はこの目標を達成するためなら、狂気とも言える執着で現場の技術者を叱咤(しった)し、プロの投資家や優秀な経営陣、科学者たちを味方に付け、まい進していく。

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