西武牧野翔矢捕手(23)が泣いた。支配下登録に復帰した日、いきなりスタメンマスクで出場。背番号は117のまま。最初から最後までマスクをかぶり、1-0の勝利を演出した。

右肘のトミー・ジョン手術をして2年。支配下選手に戻れないかも-。そんな思いも「正直、ありましたね」と明かす。

不安や焦りをやわらげてくれたのが先輩捕手の岡田と、球団スタッフの武隈氏だった。「救いになりました」。試合前に報告した。岡田からは「くじけんで良かったな。頑張れよ」と言われた。だから復帰戦は、岡田の「それが大事」など2人の登場曲を選んだ。お立ち台でそれを問われ、泣いた。同期入団でこの日先発白星の渡辺は「泣きそうになったけど、泣きはしなかったです」と笑った。

投手に多い右肘のトミー・ジョン手術。牧野は「手術しなきゃ治らない」と診断され、ごまかさずにメスを入れる決断をした。「本当にいちかばちか、でした」。手術の半年後に、ようやく山なりで40メートル。徐々に距離を伸ばし、この日は2年ぶりに1軍で盗塁も刺した。

遊学館(石川)から未来の正捕手候補と期待されプロ入りした。渡辺監督代行も18年秋、編成職として金沢市まで視察に出向いた。「あの時からバッティング、良かったよね」と懐かしむ。古賀が調子を落とし、正捕手は固まらない。「打てる」牧野が守り切り、ひと晩で名を上げた。能登半島地震で被災した地元穴水も「少しずつ戻ってきていると聞いてます」と言う。自身も苦難の末、ここまで来た。西武も、きっと。そう信じて戦う。【金子真仁】

◆牧野翔矢(まきの・しょうや)2001年(平13)3月4日、石川県穴水町生まれ。遊学館では1年春からベンチ入り。高校通算15本塁打。18年ドラフト5位で西武入団。4年目の22年、4月6日楽天戦でプロ初出場し、初打席初安打。同年6月に右肘のトミー・ジョン手術を受け、同年オフに育成契約。今季推定年俸660万円。178センチ、80キロ。右投げ左打ち。

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