多国籍企業に各国が公平に課税できる新たな枠組み作りが、大きく前進した。時代の変化に即した国際税制を構築していくことは、画期的な試み と言える。
主要20か国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は、国際課税の新ルールで大筋合意した。
法人税の最低税率を世界共通で15%以上にすることや、「GAFA」と呼ばれる米巨大IT企業などを念頭に置いた「デジタル課税」の導入が柱となる。
10月に最終合意した上で、2023年の実施を目指すという。
協議は巨大IT企業を抱える米国の反発で難航していた。バイデン政権の誕生とともに進展し、着地点が見えた意義は大きい。
法人税率を巡っては、各国が企業誘致や産業競争力強化のため、40年近く引き下げ競争を続けてきた。その結果、多国籍企業やIT企業の収益が増大する一方で、各国の税収は伸び悩んでいる。
GAFAなどの多国籍企業は、タックスヘイブン(租税回避地)と呼ばれる税率が低い国・地域に利益を移し、「課税逃れ」を図っているとされる。最低税率は、それを防ぐ効果が期待できよう。
昨年以降は新型コロナウイルス対策で、各国が巨額の財政出動を行っている。これ以上の財政悪化を止める狙いもあるのだろう。
デジタル課税は、産業構造の変化に対応するものだ。
現在の税制では、工場や事務所といった拠点がないと、国は法人税を徴収できない。主に製造業を想定しているため、多くの国は、国境を超えた事業で巨額の利益を上げている米巨大IT企業に十分な課税ができていなかった。
新制度は、一定以上の売上高と利益を得ている企業に対し、拠点がない国でも一定の課税ができるようにする。GAFAなど約100社が対象になるとみられる。
ただ、制度の具体化では各国の利害が対立する可能性が高い。
国際課税の新ルールについては、既に主要な約130の国・地域が大筋合意しているが、税率が15%を下回るハンガリーやアイルランドなどは加わっていない。
合意した国でも、最低税率を20%以上にしたい国と、15%にとどめたい国で意見が異なるという。また、デジタル課税で各国が税収を得る仕組みの詳細は未定だ。
各国は最終合意に向け、自国の利益だけにこだわらず、公平で適切なルールを世界経済全体の発展につなげるという視点で、論議を深めることが大切だ。
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