新型コロナウイルスの感染拡大で、マスクを着けて過ごす時間が増えた。新たな生活習慣が定着するなか、思わぬ形で脱水状態や熱中症になる可能性が指摘される。本格的に暑くなる前から注意したい点をまとめた。
熱中症は真夏に多いと思いがちだが、気温が高くなり始める春、大型連休前後から徐々に目立ってくる。済生会横浜市東部病院の谷口英喜患者支援センター長は「暑さに慣れるまでは体が十分対応できず、熱中症のリスクが高まる」と説明する。汗をかくなどして暑さに体を慣らす「暑熱順化」が欠かせない。
体内に熱がたまると、人間は汗の蒸発による気化熱、皮膚の血管拡張で血流が増えて体の表面から空気中に逃がす熱放散によって体温を調節する。暑熱順化が進むと、体が熱を放散しやすくなる。汗に含まれる塩分が減り、大量に汗をかいてもナトリウム不足にはなりにくくなる。
ただ谷口センター長は「コロナ下で外出の機会が減るなどして以前に比べて汗をかく場面が減っており、暑熱順化が遅れる傾向がある」と指摘する。春のうちから意識して体を慣らす必要がある。
方法としてはウオーキングやジョギングといった屋外での運動、筋トレやストレッチといった屋内でできる運動、ぬるめの湯につかる入浴などがある。谷口センター長は「いずれも無理のない範囲で15~30分程度、汗ばむまでを目安にして、2週間以上続けるのが肝心だ」と助言する。
コロナ下でマスクを着ける時間が長くなったのにも留意したい。日本医科大学付属病院の横堀将司高度救命救急センター長は「運動や負荷の強い作業をするときには周囲の人と距離を取りながら適宜マスクを外すよう心がけてほしい」と注意を促す。
さらにマスクを着けていると、内側の湿度が上がるなどして口や喉の渇きを感じにくくなるという。意識して水分を摂取するようにしたい。「1日に8~10回、1回当たり150~180ミリリットル取ってほしい。一気にたくさん飲んでも尿として排出されてしまう」と谷口センター長。
顔色や表情がわかりにくいのもリスクになる。とりわけ高齢者の場合、体調の変化に気づくのが遅れかねない。横堀センター長は「糖尿病だったり、高血圧などで利尿薬を飲んでいたりすると脱水になりやすい。積極的に周囲の人が声がけするなど配慮が必要だ」と語る。マスクによる呼吸のしにくさなどが原因で頭痛が起きる例もあるが、熱中症と見分けるのは難しい。
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