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Saturday, April 15, 2023

いつだって笑顔も涙もマスク越し…コロナ禍の高校生活、川柳に - 毎日新聞

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コロナ禍とともにあった高校生活を振り返る岡村宥さん(右)と大塚功祐教諭。「マスクを外して話すのが慣れない」と照れた=千葉県市川市国府台2の国府台高で2023年3月29日午前11時47分、小林多美子撮影 拡大
コロナ禍とともにあった高校生活を振り返る岡村宥さん(右)と大塚功祐教諭。「マスクを外して話すのが慣れない」と照れた=千葉県市川市国府台2の国府台高で2023年3月29日午前11時47分、小林多美子撮影

 <いつだって笑顔も涙もマスク越し>――。新型コロナウイルス禍による最初の緊急事態宣言が発令された2020年4月に新入生となった中高生が今春、卒業した。入学直後の長期休校から始まり、高校生活の全てを感染対策の制限下で過ごした3年間への思いを、千葉県立国府台(こうのだい)高校(市川市国府台)の生徒たちは川柳につづった。

 緊急事態宣言が東京都や千葉県などに発令された20年4月7日、同校で入学式が行われた。登校はそれっきりで、翌8日からは休校となった。現代社会を教えている大塚功祐(こうすけ)教諭(41)は当時1年生の担任。「生徒に会うこともできず、顔も覚えられず、ただ学習課題を課しているだけの毎日で、寂しさを感じていた」と振り返る。そこで思いついたのが、川柳で今の思いを表現してもらうことだった。「作文だとまた課題が増えると思うだろうし、五七五なら気軽に気持ちを表せるのでは」と考えた。担任のクラスと現代社会の担当クラスの約120人から募った。約2カ月間で約300句が集まり、休校明けに発表会を開いて皆で共有した。

 <この年は受験で自粛また自粛><制服のホコリをはらい立夏です><5月でもまだ角残る教科書・ノート><何曜日?時の流れを忘れがち><気づいたよ学校で学ぶ尊さに>――。翻弄(ほんろう)され続けた生徒たちの素直な思いがつづられていた。

 大塚教諭は学校再開後も授業やクラスなど折に触れ生徒たちと川柳の創作を続けた。コロナ禍はその後も収まらず、そのまま学びやを後にすることになった卒業生は約300人。3年間を振り返る川柳を改めて募った。

 3月8日の卒業式。生徒会長の岡村宥(ゆう)さん(18)は「みんなの思いを伝えたい」とこれらの川柳を選んで織り込んだ「卒業生の言葉」を読み上げた。タイトルは<本当の当たり前ってなんだろう>。休校期間中の川柳だ。「入学直後の休校で感じたショックやコロナ禍で考えさせられたことなど、3年間の思いを端的に表している」と選んだ。

 入学式翌日からの休校を「地獄の始まり」と表現。学校が再開しても、笑い声が聞こえない休み時間、友達の素顔が分からないマスク生活は「私たちがあこがれていた高校生活から遠くかけ離れたものでした」。だが、「私たちは決してくじけませんでした」と続け、3句の川柳を引用する。<友達とラーメン食べる日夢に見る><君と僕マスク二枚の距離遠し><日常はかけがえのないたからもの>

文化祭の演劇で主役を演じ、マスクをつけて友人と記念撮影する岡村宥さん(左)=岡村さん提供 拡大
文化祭の演劇で主役を演じ、マスクをつけて友人と記念撮影する岡村宥さん(左)=岡村さん提供

 1年目はほとんどが中止になった学校行事なども、2年生になると徐々に再開された。だが修学旅行は予定していた長崎への3泊4日ではなく、横浜に1泊2日になった。それでも、楽しい思い出しか残っていない。

 また、文化祭は3年生の各クラスが発表する演劇がハイレベルで受験生や地域住民にも人気の名物行事だが、20年度は文化祭自体が中止になり、21年度は3年生の演劇以外の出し物はなかった。岡村さんたちにとっては22年度の文化祭が最初で最後となり、岡村さんは「真田十勇士」で主役の猿飛佐助を演じた。出演者はマスクを着用。2日間で計5回上演し、予約制ではあったが保護者らも観劇でき、「やっと青春らしいことができた」とうれしかった。「言葉」では「一度きり文化祭、本当に最高でした」とつづった。

 「言葉」の最後には、卒業生の川柳から3句を選んだ。<いつだって笑顔も涙もマスク越し><コロナでも悪いことばっかじゃなかったよ><辛(つら)くても諦めなければ道ひらく>

 「前向きな作品を選んだ」と岡村さん。3年間で、人のつながりを改めて感じ、前向きに捉える力が育まれたという。「普通の高校生活とは違ったが、限られた中でどう生きていくか考えることができた。思い返せば充実した時間だった」

 取り戻せない高校生活を惜しむ川柳もあった。<黙食で青春消えた3年間><コロナ禍で失った物は多すぎた>――。それでも大塚教諭は「もっと悲観的なものや学校への不満などをつづった川柳も多いかと思っていた」が、生徒からは一生懸命前向きに捉えようとする姿勢が伝わり、「安心した」という。

 「痛みを知っている世代なので、つらい人に手を差し伸べられるような優しい人たちになってくれると思う」と期待する恩師。それぞれの進路に向かう教え子たちに「とにかくこれからの生活を楽しんでほしい」とエールを送った。【小林多美子】

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