6月初旬からコロンビア大学に通い、短期集中講座でデータジャーナリズムを学び始めた。最初のプロジェクトのテーマに選んだのが、イーロン・マスク氏が愛用するプライベートジェットの追跡だ。データ抽出に必要なコーディングの勉強を始めてわずか3週間。超新米プログラマーが追跡データから発見したこととは？
「テーマは何でもオーケー。最初から完璧にやろうとすると無理が出るので、自分ができそうなこと、面白いと思うネタを選ぶといい」
ニューヨーク市マンハッタンにあるコロンビア大学。3週間前からここで、同大ジャーナリズムスクールが社会人向けに提供する10週間の短期集中講座を受けている。学んでいるのは、インターネット上に散在するデジタルデータから必要なものだけを取り出して分析、まだ世に知られていない事実を浮かび上がらせる「データジャーナリズム」だ。データ抽出には、自分でコーディングをして選択的なデータセットを入手するためのプログラムを作る。50の手習いとはまさにこのこと。ウン十歳も年下の若者や世界各国から集まったジャーナリストと肩を並べ、毎日、大量に出される宿題をこなす日々を送っている。
講座の最初の大きな山場が、この記事を執筆している日の午前0時に締め切りを迎えた第1プロジェクトだ。自分でテーマを決め、3週間で習ったコーディング技術を駆使してネット上に公開されているデータを収集し、可能なら分析を加えて短い記事を書く。大学を卒業したてのクラスメートによると、3週間で学んだコーディングは通常の授業であれば約1年をかけて学ぶ内容とのこと。宮崎駿監督のアニメ作品「風の谷のナウシカ」で未熟のまま誕生してしまった巨神兵のように、あまり無理をすると崩壊するので、講座を担当する教授に言われた通り、親しみのあるテーマを選んだ。
イーロン・マスク氏が毎日のように乗り回しているプライベートジェット機のフライトデータの分析だ。
マスク氏の愛用機はガルフストリームの「G650ER」。尾翼に記されたコードは「N628TS」で、米国で登録される機体のコードには最初にNが入り、628はマスク氏の誕生日である6月28日、TSはテスラとスペースXを意味すると考えられる
「イーロンジェット」を追跡すると決めたワケ
既報『「マスク氏に会いたい！」 ツイッター本社前、張り込み中の衝撃事件』の通り、筆者はマスク氏に直接、取材を申し込みたいと何度か「直談判」を試みた。現時点では空振りに終わっているが、この間、ずっと参考にしていたのが、フロリダ州の大学生、ジャック・スウィーニーさんが運用するツイッター・アカウントだった。
ツイッターで「ElonJet」を始めたジャック・スウィーニーさん（写真=Christopher Spata/Tampa Bay Times/TNS via ZUMA Press Wire/共同通信イメージズ）
その名も「ElonJet」。マスク氏（厳密にはスペースXの子会社）が所有する複数のプライベート機のうち、同氏がメインに利用している機体のフライトデータを自動で収集し、どの空港から飛び立ち、どこへ向かっているか、使用した燃料の量や排出した二酸化炭素（CO2）量はいかほどか、といった情報をリアルタイムで掲示するものだ。ただしアカウントはマスク氏から「同氏の安全確保の問題」を指摘され、2022年12月にツイッターから強制削除された。現在は「ElonJet but Delayed」と改名し、24時間遅れで同じ情報を提供している。
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