ロシア侵攻で通信網を破壊されたウクライナに、衛星Starlinkからネットを提供して時の人となったSpaceX社のイーロン・マスクCEO。
しかし、いよいよクリミア出撃の決戦のときになってエンジニアにネットを遮断するよう命じ、ウクライナ無人艇によるロシア黒海艦隊作戦を失敗させていたことが、ウォルター・アイザクソンの新著『Elon Musk』で明らかになりました。
「無人艇は接続を失って、ダメージを加えることのないまま岸に打ち上げられた」と、9月12日発売の評伝書には書かれています。
核の報復を恐れた?
イーロン・マスクの話によると、衛星ネット通信を遮断する決断は、ロシア政府上層部と話し合って下したものだとのこと。
昨年9月にアスペンで開かれた政治家・財界人が集うカンファレンスでは、壇上に立って
プーチンは和平を求めている。プーチンと和平交渉すべきだ
とロシア寄りの発言をして、「おいおい侵略したのはロシアだろう」と言われる場面もありましたけど(The New Yorkerにリード・ホフマンLinkedIn社CEOが語った証言)、マスク的には、「クリミア半島でウクライナ軍が勝利を収めたらロシア軍は核兵器を発動するかもしれない」と、急に怖くなったということですね。
評伝の著者にはこうこぼしていますよ。
「なんで自分が戦争関与? Starlinkは戦争で使うために開発したんじゃないのに」
「ネトフリ観て、チルして、学校のオンライン授業で使ったり、他愛もない平和なことに使うために開発したものであって、ドローン攻撃のために作ったんじゃない」
さっそくウクライナからは、ミハイロ・フェドロフ・デジタル改革担当大臣直々に、ネット復旧を求めるテキストメッセージが飛んできました。
「テクノロジーで世界を変える人であるあなたにだけはわかってほしい」
という大臣たっての願いも虚しく、マスクは拒否。
「ウクライナやりすぎ。そこまでやると後は戦略的敗戦まっしぐらでしょ」
と反論するばかりで、クリミア地域における衛星通信ネットの復旧には、頑として応じなかったと書かれています。
まあ、あれから1年弱。ロシア黒海艦隊は司令塔の軍艦「モスクワ」まで撃沈されていますが、未だに核のボタンは押されていません。
しかしイーロンが「核の報復を止めた」などというのは、ただの詭弁に見えなくもないですけどね…。
ロシアとイーロンの関係
2022年2月のロシアによる侵攻開始直後に、約5,000台の接続端末を供与してウクライナに戦争継続の命綱を渡したイーロン・マスクですが、供与することでロシアに直接喧嘩吹っかけてると思われるのだけは避けたいんでしょうか。大変な気の遣いようです。
米国防省に巨額の請求を吹っかけて「応じられなければネットは遮断する」と強気に出たのも、ロシアの顔色を見てのこと。そう考えるといろいろ得心が行きます。
余談になりますが、イーロン・マスクとロシアには因縁があります。2001年にイーロンがロシアにロケットの買い付けに行ったとき、ロシア宇宙庁の設計責任者に冷たくあしらわれて、「自分でロケット作ったる!」と翌2002年3月に立ち上げたのがSpaceX(ロシアの技術者がイーロンの靴に唾を吐きかけたというNASA元副長官証言もあって、SpaceX創業秘話にもなっています。どこまで本当かは不明)。
ロケットのロシア依存を絶つ目的で、NASAとスクラム組んでやってきたわけですけど、ゼロからの出発ってわけじゃなかっただろうし、いろいろ恩義はあるのかな?と思ってしまいますよね。
からの記事と詳細 ( ロシアの顔色を伺うイーロン・マスク。ウクライナの作戦もネット遮断で妨害 - GIZMODO JAPAN )
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