近畿大学の水越厚史講師らは、オフィスでの新型コロナウイルス感染症の集団感染(クラスター)の主な感染経路を明らかにした。室内の全員がマスクを付けていても集団感染が発生した事例を解析。会話での人同士の距離より長い距離を飛沫(ひまつ)が移動し感染することが分かった。大人数で長時間過ごす環境ではマスクをしても集団感染する可能性を示した。感染リスク低減に向けた効果的な対策につながると期待される。
感染者の呼吸や会話で発生した飛沫が空気中を浮遊し感染する「長距離エアロゾル感染」と、感染者からの飛沫や感染者と接触した物から感染が広がる「接触感染」による感染経路を想定。オフィスでの集団感染事例を基に、感染リスクを予測するシミュレーションモデルを構築し、感染リスクを計算した。全員がマスクを着用した際の集団感染は6割以上が長距離エアロゾル感染によることが分かった。一方、室内の全員がマスクを顔にフィットした状態で着用すれば、長距離エアロゾル感染のリスクを9割低減できることが分かった。さらに換気回数を2倍にすると感染リスクを12―29%減らせることを示した。換気回数を増やし、マスクをフィットした状態で全員が着用し、感染者との接触時間を減らすことで集団感染の発生予防につながる可能性を示した。
成果は国際科学誌リスク・アナリシス電子版に掲載された。
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