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Friday, January 15, 2021

シンプルなKDDI新料金プラン povoの“トッピング”は減収影響をカバーできる可能性も - ITmedia

kuebacang.blogspot.com

 ドコモの「ahamo」やソフトバンクの「SoftBank on LINE(仮称)」に対抗する、KDDIの新料金プランが発表された。月額2480円(税別、以下同)で、データ容量20GBの「povo on au」がそれだ。他社より500円安いのは、5分間の音声通話定額を「トッピング」と呼ばれるオプションにしたため。ファストフード感覚で、サービスを自由に追加できる点を差別化のポイントにした格好だ。トッピングの打ち出し方次第では、減収影響もカバーできる可能性があり、バランスの取れた料金プランと言えそうだ。その狙いを読み解いていきたい。

povo オンライン専用の「povo」を発表したKDDI。既存の料金プランも全面的に改定した(写真提供:KDDI)

音声通話定額なしで2480円を実現、若年層のニーズに応える

 15日の定例会見で、武田良太総務大臣が「非常に紛らわしい」と評したKDDIのpovoだが、その中身は小学生でもすぐに理解できそうなほどシンプルだ。データ容量は20GBで、料金は2480円。音声通話には、別途30秒20円の通話料がかかる。ドコモのahamoや、ソフトバンクのSoftBank on LINEと同様、オンラインに特化しており、契約の申し込みやサポートには、店舗を利用できない。ahamoやSoftBank on LINEより500円安いのは、5分間の通話定額が含まれていないためだ。

povo 20GBで2480円、通話は30秒20円とシンプル。音声通話定額を外すことで、価格優位性を持たせた格好だ(写真提供:KDDI)

 音声通話定額を外したのは、メインのターゲット層と関係がある。KDDIの代表取締役社長、高橋誠氏は「近ごろのお客さまは、データ通信やメッセージの利用が中心。インターネット通話アプリで十分という方は非常に多い」と、その狙いを語る。LINEなどのアプリを使うユーザーにとっては、5分間の音声通話定額が強制的にセットにされるより、その分料金を500円下げてくれた方がいいというわけだ。実際、KDDIの20代以下のユーザーの6割は、月間の通話分数が10分未満に収まっているという。

 もちろん、残り4割のユーザーの声を無視したわけではない。それを解決するのが、トッピングと呼ばれるオプションだ。トッピングとは、いわゆるオプションのこと。オンライン専用プランだけあって、アプリでスイッチをオンにするだけで簡単に申し込むことができる。ベースの料金プランはシンプルにしつつ、自由に料金をカスタマイズできるようにした格好だ。ピザや牛丼といったファストフードの料金体系を考えれば、理解しやすいだろう。

povo トッピングを追加し、料金プランを自由に味付けできる

 トッピングの第1弾として、5分間の音声通話定額や完全通話定額を用意。さらに面白いのが、24時間限定でデータ通信の容量を無制限にするというトッピングだ。こちらの料金は1回24時間で200円。高橋氏は「Netflixは標準画質で1時間あたり1GB必要になるが、200円をお支払いいただくことで、20GBの枠とは別に24時間はデータ量がノーカウントになる」と語り、動画を集中的に見たいときなどに活用できることをアピール。テザリングも無制限になるといい、出張やテレワークで一時的にPCを接続するときにも役立ちそうだ。

povo
povo トッピングの第1弾として、音声通話定額や24時間だけデータ通信が無制限になるオプションを導入する

 KDDIが「第1弾」と銘打っていたように、トッピングはユーザーの声を聞きながら追加していく方針。高橋氏は「2時間ドラマを見放題にしたり、1日SNSを見放題にしたりと、アイデアをいただきながらトッピングメニューをどんどん成長させていきたい」と語る。特定のサービスやコンテンツのデータ容量をカウントしないゼロレーティングのような通信サービスとも相性がよさそうだ。トッピングでサービスを自分好みにカスタマイズできる点は、オンライン専用プランならではの魅力といえる。

povo コンテンツと絡めたトッピングも検討しているようだ

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トッピングはユーザーとKDDIの双方にとって“おいしい”仕組み

 povoは、KDDIが新たに設立したKDDI Digital LifeがMVNOとして展開する予定だった新ブランドを、料金プランに改定したものだ。KDDIによると、運営はKDLが行うというが、ネットワークは借り物ではなく、auと同品質になる。高橋氏も「設備構成は一部異なるが、エリアや最大速度はauと同等の品質」と太鼓判を押す。筆者の推測だが、MVNOとして準備してきたパケット交換機(P-GWなど)は、そのまま流用している可能性がある。こうした差分はあるため、5Gへの対応はやや遅れて夏ごろの開始になるという。

povo 10月にKDDI Digital Lifeを発表した際には、MVNOとして展開する予定だった

 KDLが立ち上げようとしていたMVNOは、シンガポールに拠点を構えるCircles Asiaのノウハウを生かし、ユーザーが自由にカスタマイズできることを特徴にしていた。Circles Asiaは、シンガポールの他、台湾やオーストラリアでも事業を展開しているが、オンラインに特化したカスタマイズの自由度が高い料金プランを売りにしている。例えば、シンガポールのCIRCLES.LIFEには、20GBプランと100GBプランがベースとして用意されており、そこにデータシェアのSIMカードやローミングサービス、音声通話定額などを簡単に組み合わせられるようになっている。

 povoに生かされたのは、こうしたノウハウだ。MVNOの新ブランドとして投入しなかったのは、総務大臣の「羊頭狗肉」発言や、他社に対抗する必要があったからだ。総務大臣は、別ブランドでの料金値下げをけん制。ドコモのahamoもその意向を受け、痕跡は残しつつもサブブランド色は徹底的に排除した。高橋氏も「MVNOで提供しようと思っていたが、それ(発表)以降の社会的な動きや、他社の動きがあった」とその背景を明かす。「auの中でpovoをやった方が、対抗力がつく」(同)というわけだ。

povo 総務省の意向や競争環境も踏まえ、auブランドの新料金プランとして投入する

 トッピングのシステムは、ユーザーが必要なサービスを選べるだけでなく、うまく組み立てることができれば、KDDIが受ける減収影響も緩和できる。例えば、24時間のデータ無制限トッピングを10回追加すると、料金は2000円。ベースの料金と合わせると、ピタットプランで割引を全て受けたときの上限金額とほぼ同じになる。トッピングなだけに、ユーザーとKDDIの双方にとって“おいしい”仕組みといえる。

 実際、KDLの設立を発表した際に、高橋氏はCIRCLES.LIFEの事例を引きながら、「シンガポールでの事例を見ると、MVNOだから安いというのではなく、MNOより高いケースもある」と語っていた。逆に、魅力的なトッピングがなければ、ベースの2480円で済んでしまうため、KDDIのARPUは大きく下がる恐れもある。その意味で、魅力的なトッピングをどのように投入していくかが、成否を分ける鍵になる。

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使い放題のデータMAXやUQ mobileも料金改定、料金で攻め返すKDDI

 povoに注目が集まりがちなKDDIの新料金だが、既存の料金プランも大幅に手を入れてきた。まず、auの「データMAX」は、3月に「使い放題MAX 5G/4G」に改定。料金は他社のデータ容量無制限プランとほぼ同じで、正価が6580円だ。家族3人で契約すると、また固定回線のセット割である「auスマートバリュー」が適用されると、それぞれ1000円が割り引かれ、支払いをau PAYカードに設定すると100円が割り引かれる。全ての割引を適用すると、料金は4480円まで下がる。

povo データMAXも料金を改定。使い放題MAXに名称を改め、6580円の料金を打ち出した(写真提供:KDDI)

 金額はドコモの「5Gギガホ プレミア」より70円安いが、ほぼ同水準と言っていいだろう。ソフトバンクの「メリハリ無制限」とは同額。条件は少々異なるが、割引を全て適用した際の価格は、3社とも4480円で同額だ。KDDIはNetflixやAmazonプライムなど、各種コンテンツサービスをバンドルした料金プランを用意しているが、こうした派生プランも改定する予定だ。「データMAXプランをこのようにシンプルにしたので、セット料金も見直す必要があると思っている。3月までに皆さんにお届けできるよう、準備を進めている」(高橋氏)という。

 高橋氏が「一歩踏み込んだ」というのが、UQ mobileの料金プランだ。2月から、容量別にS/M/Lの3つに分かれた「くりこしプラン」を導入。その名の通り、余ったデータ容量を翌月に繰り越せる上に、それぞれの料金を競合のY!mobileより引き下げている。3GBの「くりこしプランS」に至っては1480円で、MVNOと同水準の安さだ。「くりこしプランM」は15GBで2480円、「くりこしプランL」は25GBで3480円と、こちらもUQ mobileと競合するY!mobileの新料金プランより割安で、しかもデータ容量がそれぞれ5GBほど多い。

povo UQ mobileの料金プランは、割引なしの代わりに正価を下げた。競合のY!mobileと比べても料金は安い(写真提供:KDDI)

 povoはオンライン専用だが、オンラインでの手続きに不安があるユーザーが店頭に来た際には、UQ mobileを勧めやすい。くりこしプランMとpovoは同額のため、ショップでのサポートの有無でどちらのプランを選ぶかを決めることができる。2つのプランでデータ容量には5GBの差分があるが、これがショップのサポートコストといえそうだ。

 au、UQ mobile、そしてpovoに通底しているのは、料金プランのシンプルさだ。12月に発表したAmazonプライムとのバンドルプランは、割引条件の複雑さやタイミングの悪さから大不評を買ってしまったが、その反省を生かし、シンプルで分かりやすくなるよう細心の注意を払ったようだ。割引前の“素の料金”をきちんと打ち出すようになった点は、歓迎したいポイントといえる。価格的なインパクトも大きく、ユーザーからの支持を集めそうだ。

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