2021年03月03日08時49分
2月28日に発生したみずほ銀行のシステム障害は、「甘い想定」が積み重なって被害が拡大した。一つ目の甘さは、定期預金の積み立てなど通常の取引量が多い月末に、システムを増強せずに臨時のデータ移行作業を行ったこと。さらに、新しい基幹システムが持つ「自衛機能」の影響も見誤っていた。再発防止には、顧客目線でリスクを広範に捉える業務体制づくりが欠かせない。
今回のシステム障害では、みずほ銀が全国に保有する現金自動預払機(ATM)の約8割に当たる4318台が一時停止。異常な取引と判断したATMが計5244件のキャッシュカードや預金通帳を取り込み、多くの利用者が適切な対応を受けられないまま長時間待たされる事態となった。
みずほ銀は2月27、28両日、一定期間取引のない定期預金(不稼働定期預金)の口座のデータを45万件ずつ移行する作業を実施した。ただ、28日は通常の取引が集中し、システムの容量がオーバー。定期預金の積み立ては給料日直後や月末に設定している預金者が多く、こうした設定日が重なり取引量が増えたとみられる。
とはいえ、予測不可能な事態ではない。こうした繁忙期に臨時のデータ処理を行うのであれば、なぜ容量を増設しなかったのか。みずほ銀の藤原弘治頭取は1日の記者会見で「想定の甘さに起因するトラブル」と認めた。
容量オーバーで、一部ATMなどで定期預金の取引ができなくなる不具合が起きたが、この後も「甘い想定」が重なった。取引不能件数は当初463件で、「現行の(人員)体制で処理できると考えていた」(藤原頭取)と言う。
しかし、不具合がシステム全体に影響するのを防ぐため、基幹システムがATMとの連携を一部遮断。2019年に導入した新システムの「自衛機能」が働いた格好だが、この結果、ATMの処理速度が低下。取引の異常を検知したATMが「預金者の被害を食い止めるため」(同行関係者)に、カードや通帳を次々と飲み込む事態にまで想定が及ばなかったと言える。
通常であれば、ATM備え付けの電話からの問い合わせで警備員が駆けつけるが、休日ということもあり、人員不足で同時多発的な被害への対応が不能となった。藤原頭取は「データ移行を考慮して当初から人員を厚くすべきだった」と、この点でも甘さを認めた。
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