新型コロナウイルス対策のマスク着用について、日本医師会の中川俊男会長が「ウィズコロナで、マスクを外す時期が日本に来るとは思わない」と発言し、波紋を広げた。新型コロナとの共存を模索する中、欧米ではマスク着用の義務が緩和されつつあるが、日本ではいつまで着用を続けるのか。議論が始まりつつある。(沢田千秋、原田遼)
中川氏は20日の記者会見で「マスクを外すのはコロナが終息した時。疫学的な調査をし、終息すると分かったら、初めてマスクを外していい」などと述べた。後藤茂之厚生労働相も22日の会見で「着用は極めて重要。(緩和は)専門家の意見を聞きながら検討していく」と慎重だった。
感染拡大初期から、政府や専門家はマスク着用を推奨し、国内では、無症状者も含め全員が着用する「ユニバーサルマスク」が浸透した。一方、マスクへの抵抗感が強い欧米では一時期、罰金などを設けて義務化したが、「脱マスク」の動きがみられる。
英イングランドは1月、公共施設でのマスク着用義務を撤廃。米フロリダ州の連邦地裁は、米疾病対策センター(CDC)が課す公共交通機関でのマスク着用義務は違法と判断した。
現在、流行中のオミクロン株はデルタ株より毒性が弱く、若年層の重症化率、致死率は1%未満。ただし、感染力は高く、東京都の1日の新規感染者数(1週間平均)は5000人超で、昨夏の第5波のピークを上回っている。いつマスクを外せるか個人で判断することは難しい。
「マスク着用は同調圧力というより、もはや社会規範として習慣化した。専門家が緩和の提言をしないと、いつまでも続く」。新型コロナ対策分科会メンバーの大竹文雄・大阪大特任教授(行動経済学)はそう話す。「マスク着用により、子どもが感情を読み取る能力の発達に影響する可能性や息苦しいので運動をしなくなるなどの弊害もある」
大竹氏は4月上旬の分科会で、「同じ呼びかけを繰り返しても効果がない。屋外ではマスクを外してもいいとメッセージを出してはどうか」と提案した。しかし、反対意見があり、分科会の国民向け緊急メッセージは「適切なマスク着用」との表現にとどまった。
脇田隆字・国立感染症研究所長は、マスク着用によるコミュニケーション能力の低下や肌荒れ、熱中症などを踏まえ、「感染予防効果はあるが、副作用もある。屋外で人がいない所でマスクをする必要は当然ない」と明言。「どういった場面でマスクをして、どういった場面でしなくてよいか、考えていく必要がある」とし、緩和の提言をできるか検討していくという。
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