【シリコンバレー=白石武志】総額440億ドル(約6兆円)の買収契約の撤回を不服として米ツイッターが米起業家イーロン・マスク氏を相手取って起こした訴訟の最初の公聴会が19日に開かれた。裁判官は株主らを保護するため迅速な訴訟手続きを求めたツイッター側の主張を大筋で受け入れ、10月に5日間で審理を行う日程を示した。
「遅延はツイッターに取り返しのつかない損害を与えるおそれがあり、長引けば長引くほどリスクが高まる」――。米東部デラウェア州の裁判所が19日に電話会議システムを使って開いた公聴会で、裁判官は迅速な訴訟手続きを求めたツイッターに有利な判断を示した。
デラウェア州の裁判所は一般に提訴から2〜3カ月で審理を始める。ツイッターは2カ月後の9月に4日間の日程で審理するよう求めていた。被告であるマスク氏の代理人弁護士は決着を急ごうとするツイッターが示した日程を「ワープスピード(瞬間移動のような速さ)」と呼び、大型訴訟としては不当だと批判していた。
マスク氏側は証拠開示などのために時間が必要だとして、審理開始を早くとも2023年2月に設定するよう求めていた。手続きを急げば裁判所が早まった判断をするおそれがあるとの懸念も示したが、19日の公聴会で裁判官は「被告はこの法廷の能力を過小評価している」と切って捨てた。
裁判官は公聴会の最後に「ツイッターは契約に縛られており、どっちつかずの状況が長引けば雲行きが怪しくなり、潜在的な損害が大きくなる」と述べ、10月に5日間の日程で裁判を行う方針を示した。日程は厳密なものではないとしており、マスク氏側がさらに異議を申し立てる可能性がある。
マスク氏は7月8日、ツイッター経営陣が4月25日に結んだ買収契約の複数の条項に違反したとして契約の撤回を同社に一方的に通知した。同社側が「ボット」と呼ばれる実態のない偽アカウントに関する情報提供に十分に応じなかったことなどが理由だと主張している。
ツイッターは7月12日付でデラウェア州の裁判所に提出した訴状のなかで、マスク氏が求める偽アカウントに関する情報提供には応じてきたと反論。「買収契約に基づく義務をすべて履行している」として、4月に合意した価格と条件で買収取引を実行するよう求めている。
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