仙台市太白区にある中華料理チェーン「大阪王将」のフランチャイズ店「仙台中田店」の元従業員男性が店の衛生環境の劣悪さをツイッターで告発したことが波紋を広げている。男性が調理場について「ナメクジが発生している」とSNS(交流サイト)に投稿すると、店の衛生管理に批判コメントが殺到。店は臨時休業し、大阪王将や運営会社が対応に追われる展開となっている。
衛生意識に危機感
「料理の質に安かろう、悪かろうがあったとしても、衛生面ではあってはならない」
元従業員男性は7月28日、仙台市内で記者会見を行い、大阪王将とフランチャイズ契約を結んだ運営会社の姿勢をこう批判した。
男性は運営会社を退社した24日、ツイッターに「大阪王将仙台中田店あるある 冷蔵庫の扉の隙間にナメクジ大量にいる」などと書き込んだ。男性の不満に同調する形でインターネットは炎上。市は翌25日に店に立ち入り検査を行った。大阪王将の持ち株会社イートアンドホールディングスの株価は下落し、在京民放キー局含めマスコミも店の衛生面の不備を大々的に報じる事態に至った。
元従業員の男性は平成30年、「仙台中田店」を運営する飲食サービス業「ファイブエム商事」(宮城県石巻市)に入社。別店舗に勤務した後、昨年12月に仙台中田店に異動した。同店の勤務は2度目で、店長が代わったこともあり、1度目と比べ店舗の衛生意識が急に低下したように感じたという。
調理場の清掃作業は徹底されず、ナメクジやゴキブリ、コバエなどが「量が多すぎて駆除しきれない」(元従業員男性)状態で、コバエが混入した料理や腐りかけた豆腐を使った料理を提供することもあったという。
数万人のフォロワー
実はこの男性は数万人のフォロワーを持つネットで著名な投稿者だった。とはいえ、告発による影響の大きさは男性自身も「想定外」だという。
大阪王将やファイブエム商事に批判が殺到した背景には、飲食店に衛生管理を徹底してもらいたいという人々の要望があり、投稿内容がまさに合致した結果だったといえる。
元従業員男性は会見で、運営会社側に衛生管理の改善を再三訴えていたと明かした。しかし「店長やマネジャーはどんなに言っても動かなかった。掃除に対する意識は変わらない。ネットで告発するしかなかった」と語っている。
正当な訴えに迅速対応
「ナメクジ騒動」がもたらした教訓は、あらゆる業種に波及する可能性がある。経営者側は、正社員やアルバイトなど雇用形態を問わず、従業員の正当な訴えに耳を傾け迅速に対応する姿勢が必要なことを示した。
ネットトラブルを研究する「シエンプレ デジタル・クライシス総合研究所」(東京)は今回の騒動について「企業側は従業員の声に今まで以上に耳を傾けざるを得なくなった。従業員の不満について、ネット上で告発される前に把握する態勢を整える必要がある」と警鐘を鳴らしている。
ファイブエム商事は8月1日、同社ホームページで同店舗の衛生管理について公表し「徹底改善を進めている」としている。
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【大阪王将のナメクジ騒動】 大阪王将「仙台中田店」の元従業員男性が7月24日、ツイッターで「もう大阪王将仙台中田店でナメクジ退治とゴキブリ退治やりたくない」などとツイッターに投稿。仙台市の郡和子市長が26日の会見で「調理場の清掃に行き届いていない部分があり、指導した」と述べ、食品衛生法に基づき同店の清掃指導などを行ったことを明らかにした。ナメクジは確認されなかったという。これを受け、運営会社のファイブエム商事や大阪王将は、ホームページなどで謝罪した。
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【記者の独り言】 飲食業界では近年、従業員側が店舗の物品や商品で悪ふざけした投稿を行う「バイトテロ」による炎上に気を使っていた。ところが今回のナメクジ騒動。「飲食店の衛生はきちんとしてね」という世間の要望に従業員のネット告発の中身がかみ合った。店の休業どころか企業の存続に関わる事態となりかねないほどのネットの訴求力。今後の労使関係に影響を及ぼす出来事になるかもしれない。(奥原慎平)
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