マスクの着用は屋内外を問わず「個人の判断」に委ねる―。政府が5月に新型コロナの感染症法上の位置付けを「5類」に引き下げる際の方針を示した。
これまで屋内では一定の条件を除いてマスク着用としていた。
ウイルスは重症化しにくくなっている。表情が見えないと子どもの発達に悪影響を及ぼすなど、マスクの弊害も指摘されている。「脱マスク」へとかじを切るのはうなずける。
問題はその道筋だ。政府が判断を個人に丸投げして済む話ではない。てんでばらばらの対応では、高齢者や基礎疾患のある人など重症化リスクの高い人が感染する危険も高まってしまう。
マスクをするか、しないかは、個々の判断が尊重される。それはこれまでも、これからも同じだ。
その上で、一人一人が適切に判断できるよう、政府は科学的な知見に基づく最新の情報を、国民に説明する責任がある。
流行が始まって3年、今ではマスクをするのが当たり前の生活になってしまった。着けるか外すかは、感染防止対策に同調心理も加わり複雑かつ繊細な判断になる。周りの目が気になって外せないのは、子どもも大人も一緒だ。
厚生労働省は昨年春、屋外ではマスクは原則不要との方針を示した。だが昨夏の猛暑の時期も、この冬も、外出している人のほとんどが着けている。
基本に戻ると、なぜ症状のない人もマスクを着けることを求められるのか。コロナは無症状でも人にうつしてしまう可能性がある点が、重要な特徴だからだ。
5類に引き下げたとしてもこの性質は変わらない。重症化リスクの高い人を守るには、脱マスクを進めつつ、社会で感染防止対策を共有することが欠かせない。
対策は、最新の知見に基づき更新されてきたのか。
流行当初、厚労省は感染経路として飛沫(ひまつ)感染と接触感染を挙げ、ソーシャルディスタンスや手洗いなど「新しい生活様式」を提唱した。飲食店や事業所はアクリル板やビニールカーテンの仕切りを設け、入り口にはアルコール消毒液が置かれた。
現在はエアロゾル感染、つまり空気感染が多いことが内外の研究から分かっている。換気の徹底とマスク着用が対策の鍵になる。仕切りや消毒は今も有効なのか。
5類に移行する前に、政府は取り組むべきことがある。マスクの効果も含めて感染症対策を検証し総括することが必要だ。
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