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Wednesday, August 16, 2023

ベテラン保育士も「マスク保育」の影響を警鐘!保育現場で見たコロナ禍3年の子どもたちのリアル [保育園・保育所] - All About

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マスク着用が「個人の判断」となってから約4カ月……

少しずつ進む脱マスクだが……

2020年3月2日から突然始まった「全国一斉休校」。同時に子どもから大人までマスクの着用が日常となり、食事中の「黙食」も園や学校生活の日常になっていった。

2023年7月、京都大学や筑波大学などの研究グループは、「コロナ禍を経験した5歳児にコミュニケーション能力などに関して約4カ月の発達の遅れがある」とする調査結果を明らかにした。

長期的な影響は未知数だが、「保育士の感情がスムーズに伝わらない」「口元のもぐもぐやあーんの動きが伝わらない」など、マスク生活による子どもたちへの影響を懸念する保育士らの現場の声は、コロナ禍が始まった当初から上がり続けていた。現場ではどんな影響を感じていたのか。

愛知県で40年以上保育士として子どもたちに寄り添う、社会福祉法人熱田福祉会の理事長・平松知子さんは、マスク社会の影響を懸念する。
 

3年間、コロナ禍がスタンダードな世界で育ってきた乳幼児

「この3年間、3歳までの子はコロナ禍がスタンダードな世界で育ってきたわけです。家族以外の大人たちは顔が半分しか見えない。そんな中で暮らしてきたんですよね。口元が見えないという状況が、感情の読み取りに影響ないわけがないと思っています」(以下、平松さん)

保育士らがマスクを着用する環境で育つ中、先生の“本当のお顔”を求める園児もいたそうだ。

「あるとき3歳児が、先生のマスクの下のお顔を見せて!と言ってきたことがありました。子どもの気持ちを考えると切なかったです」

2023年5月、新型コロナウイルスは感染法上の分類が2類から5類へと移行し、保育士らもマスクを取り始めた。ところが、初めて体験する「マスクなしの日常」に、乳幼児たちは動揺を見せたと平松さんは話す。

「保育士がマスクを取ると、泣き出した0歳児がいました。人見知りで泣いたんです。大好きな担任の先生なのに、その子にとって先生のお顔はマスク込みの認知だったということです」

いま、保育士のマスクが外せるようになり、改めて表情で伝えることの重要さを実感しているという。

「保育士たちは口元を見せて表情豊かに絵本を読めること、みんなで歌を歌い合えることの幸せをかみしめています」
 

5類移行後もマスクを手放せない園児、奪われた経験への配慮も必要

周囲がマスクを外す流れの中でも、マスクがないことに不安を感じて手放せない園児もいるという。

「裏を返すと、それだけ3年間ずっと『マスクをつけなさい』と言われてきたということです。子どもたちは、本当にコロナ禍をがんばって生きてきました。行きたいところにも行けない、遊びもがまんしなくてはいけない、おじいちゃんやおばあちゃんにも会えない。遠足もなくなりました。子どもたちなりに、コロナだから仕方がないと受け入れながらやってきたんです」

2020年から続いたコロナ禍の3年間を「何歳のときに過ごしたか」が、これからの重要な配慮のポイントとなるのではないかと平松さんは考える。

「コロナ禍が、生まれてからの3年間だったのか、小学校入学前後の3年間だったのか、または思春期だったのか。修学旅行や体育祭など楽しいことが経験できずに過ごした人たちなのか。大学の授業がすべてオンラインだったのか。コロナ禍を過ごした環境へのこうした配慮は必要になってくると思います。

例えば、今年度新しく入ってきた職員は、大学・短大時代はほぼ全てコロナ禍だったという世代。先輩たちとサークル活動をしたり、文化祭や体育祭を作ったりする経験がないまま、社会に出ているわけです。仲間と悩みを共有できる同期の食事会をやりましょう、となってもやり方が分からない。だから理事長である私自ら、スマホを使って食事会の設定の仕方を教えています。そういう年代に合わせた配慮が必要になってきます」
 

つながりが途絶えた保護者のネットワーク

コロナ禍で奪われた機会への配慮が必要になっている世の中、「同じことがお母ちゃんやお父ちゃんたちにもいえる」と平松さんは考える。コロナ禍で、新米ママの「ママ友ができない」という定番のお悩みが激減したと聞いたことがあるからだ。

「これは、コロナ禍で多くの人が友だちを持たなくなったから。たしかに、ママ友の煩わしさはなくなったかもしれない。でも、一人で子育てしてるってことを考えると、コロナの影響は大きいなって思います。

コロナ禍では保護者の集まりもバザーも夏祭りもなくなり、大人同士のつながりがなくなってしまったことで、直接要求を言えなくなったという話を多方面から聞きます。例えば、園に対する要望も、直接園に伝えるのではなく自治体に言う、SNSの一部でだけ投稿して溜飲(りゅういん)を下げるというケースも見られます。父母会があったときはその場で話し合えていたことも、直接は言えなくなっているんです。

3歳くらいまでの子のお母ちゃんは、コロナ禍、たった一人で分娩台に上がって出産してきた人たちです。孤独の中で子育てが始まり、これまでがんばってきました。だから、人と一緒に子育てするのは、まさにこれから。『助けて!って言ってもいいんだね』『うちも同じー!』『雨の日はどこに遊びに行ったらいい?』といったようなことが、今までSNSやウェブからしか情報を得られなかったのが、生身の保育園のお友だちの父母と話したり、一緒に遊んだりできるというのが今やっと始まり出したところなんです。

これからの社会生活で子どもの発達も大人同士のかかわりもどんどん豊かに

これからの社会生活で子どもの発達も大人同士のかかわりもどんどん豊かに

コロナ禍で子どもたちもがんばってきました。だからこれからは、みんなでわちゃわちゃおしゃべりして、自分の思いを言ってみたらなんとかなった!という経験を味わわせてあげたいし、一人よりみんなで遊んだ方がずっと楽しいということを、保育園の中ではいっぱい経験させてあげたい。同時にお父ちゃんやお母ちゃんたちも、そういう感じで子育てを楽しめばいいんじゃないかなと思います。大丈夫。これからの社会生活で、子どもの発達も大人同士の関わりもどんどん豊かになっていけますよ」

マスク着用が「個人の判断」となってから約5カ月、新型コロナが5類に移行して約3カ月。少しずつ「脱マスク」は進んできた。多くの幼児がマスクを外すようになった一方で、思春期の子どもたちの間ではマナー化して浸透しているケースもあり、長期化の様相を呈している。特に公共の場や学校、塾などでは、集団主義や同調圧力の影響もある。子どもたちの豊かな未来のために、大人ができることは何か。「顔を見せない社会」が私たち大人に問いかけている。

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