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Wednesday, September 6, 2023

イーロン・マスクの発想を支える3つのSF作品…曲解していると指摘する声も - Business Insider Japan

kuebacang.blogspot.com

8月21日にニューヨーカー誌に掲載されたマスクの評伝記事は、彼自身が影響を受けたものとして常に挙げてきた、3つのSF作品に言及している。

これらの作品と「偉大な人物が驚異的なテクノロジーを使って逆境に打ち勝つ」というそのテーマは、マスクの意思決定の根底にある発想を、ある程度説明してくれるかもしれない。だが、一部からは、マスクはこうした作品が本当に訴えたいことを理解していないという批判の声もあがっている。

「xAI」の設立は『銀河ヒッチハイク・ガイド』の影響が見て取れる

ダグラス・アダムス(Douglas Adams)の『銀河ヒッチハイク・ガイド(原題:The Hitchhiker's Guide to the Galaxy)』は、強烈な風刺に満ちたSFコメディ小説だ。銀河バイパス建設のために突然地球が消滅させられた結果、地球人唯一の生き残りとなった人物の珍道中を描いている。

マスクはかつて、この物語について、「重要な点に光を当てている。それは、答えよりも問いのほうが難しい場合が多いということだ」と発言していた。

『銀河ヒッチハイク・ガイド』に登場する、「生命、宇宙、そして万物についての究極の疑問の答え」を導き出すというスーパーコンピューターは、マスクが立ち上げた新会社「xAI」のミッションである「宇宙の真の性質を理解する」に影響を与えたように見える。

それどころかマスク氏は、この会社の創立日(その数字を合計すると42になる)も、この小説に出てくる「生命と万物に関する究極の疑問の答えとされる数字」にちなんだものであることを示唆している

しかし、歴史学者でハーバード大学教授のジル・ルポール(Jill Lepore)は、マスクがこの小説のテーマを曲解していると批判する。ルポールは、2022年にポッドキャスト「ネクスト・ビッグ・アイデア」にゲスト出演した際のインタビューで、こう述べている。

「ダグラス・アダムスが訴えているのは、『金持ちの開拓者を他の惑星に派遣して、豪華な植民地を建設するようなことをすべきではない、そういう考え方は間違っている』ということだ。彼は風刺小説を書き、どう間違っているかを、手を替え品を替えして示しているのだ」

「この小説がマスクの生き方のガイドになっているわけだが、彼はこのガイドを、この物語がまさに異を唱えている事柄を正当化するために用いている」と彼女は付け加えた。

宇宙旅行に駆り立てる原動力は「ファウンデーション」シリーズ

スペースXの最高経営責任者(CEO)を務めるマスクは、2013年にガーディアン紙が行ったインタビューで、スペースXの火星探査ミッションは、アイザック・アシモフの古典的SF「ファウンデーション」シリーズに影響を受けていると明かしたことがある。彼はこのシリーズから、「文明はサイクルを描いて変動する」という知見を得たと述べていた。

マスクはそこでこう語っている。

「人類が地球以外の場所に生命体を送り込むことが可能になったのは、(地球の)45億年の歴史で初めてだ。このことを考えると、このような機会がある状況が今後も長期間続くと楽観視せず、可能性があるうちに行動することが賢明のように思われる」

「ファウンデーション」シリーズでは、かなり以前から崩壊が始まりつつあった銀河帝国で、数学者のハリ・セルダン(Hari Seldon)が「心理歴史学」という新理論を用いて、1万年にわたって続くと考えられた混乱と暴力の時期を、1000年間に短縮し、比較的平穏な状況が続くよう計画する。

このSFの内容が、「人類文明が脅威にさらされている」というマスクの信念の形成にどう影響を与えたかは、容易に見て取れるだろう。

しかし、文学レビューサイト「リテラリー・ハブ(Literary Hub)」の編集長を務めるジョニー・ダイアモンド(Jonny Diamond)は、マスクがこのシリーズから得たとする知見に強烈に反発している。ダイアモンドは、リテラリー・ハブに掲載した論説記事で、ますます居住困難な環境になりつつある地球のために解決策を導き出そうとするのではなく、「ごく少数の人を宇宙に送り出す試み」のために、あまりに多くの私財を投じているとしてマスク氏を批判した。

ビデオゲーム「デウスエクス」と、そのサイバーパンクな世界観をこよなく愛している

マスク氏は、2000年にアメリカで発売されたSFビデオゲーム「デウスエクス(Deus Ex)」の大ファンのようだ。これまで、X(旧ツイッター)への投稿で繰り返し言及し、さらには、このゲームに登場する銃のレプリカをベッドサイドに置いているほどだ。

さらにマスク氏は、自らが立ち上げた、脳にマイクロチップを埋め込むブレーン・マシン・インタフェース(BMI)の開発企業、ニューラリンク(Neuralink)について説明する際にも、このゲームに言及している。彼はXへの投稿で、この企業のツールが「通常の周波数や振幅を超えて、可聴域を拡張する可能性がある。まさに『デウスエクス』だ」と書いていた(ゲームの登場人物たちは、肉体と機械が細胞レベルで融合するサイボーグ技術「ナノ・オーグメンテーション」を受けており、身体の至るところに特殊な機能を発動させる装置が備え付けられている)。

このゲームでは、主人公のJC・デントン(J.C.Denton)が、実世界をほうふつとさせる陰謀論や腐敗した組織、秘密の政府機関と戦う。このゲームに言及したマスクの投稿からは、ゲーム内に登場するイルミナティ的な秘密組織が、人々を抑圧するために製造したウイルスを、現実世界の新型コロナウイルスになぞらえる意図がうかがえる。

だが、「デウスエクス」のファンからは、マスクを揶揄する声も次々にあがっている。このゲームのプロットを自分の都合の良いように読み取っているというのだ。

しかもマスクは、自身をゲームの主人公に重ね合わせているようだが、複数のファン、さらにはゲームの作者の1人からも、彼はむしろ、ゲーム内に登場するビリオネアで、ウイルスを開発する極悪な起業家に近いという痛烈な指摘もあがっている。

Insiderではマスクに対し、コメントを求めるメッセージを通常の業務時間外の時間帯に送ったが、すぐに回答は得られなかった。

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