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Tuesday, January 16, 2024

テスラがエネルギー企業へ、マスクCEOも「ヒートポンプ」に着目 - ITpro

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 「参入してきたらかなりの脅威だ。勘弁してほしい」。不安を口にするのは、ある国内空調メーカーの営業担当者である。祈るのは、米Tesla(テスラ)が家庭用のヒートポンプ市場に進出してこないことだ。

 テスラのヒートポンプ市場への参入はかねて指摘されてきたが、声が大きくなったのは2023年3月以降である。同社が開催した投資家向け事業説明会「Tesla Investor Day 2023」で、同社最高経営責任者(CEO)のElon Musk(イーロン・マスク)氏が「クルマではヒートポンプがデフォルトになった。いつか、当社は家庭用のヒートポンプをつくるかもしれない」と発言した(図1)。

図1 テスラがヒートポンプ市場に参入か

図1 テスラがヒートポンプ市場に参入か

同社は建物のエネルギー管理に関するデバイスとして、太陽光パネルや電気自動車(EV)、蓄電池を展開済みである。(出所:テスラの画像を基に日経Automotiveが作成)

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 Tesla Investor Day 2023で発表した新たな長期計画「Master Plan Part 3(マスタープラン パート3)」でも、「持続可能エネルギー経済(Sustainable Energy Economy)」の実現を目指すテスラにとってヒートポンプが重要との認識をはっきりさせた。

 現時点では、テスラはヒートポンプ市場への参入について具体的な計画を出していない。それでも、マスク氏の発言を含めて状況証拠はそろってきた。本特集の前回(第4回)で解説したように、同社は熱を高度に操る技術力を持つ。特許分析からも、グリッド(電力系統)にヒートポンプを組み込んでいく構想が見えた。

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サイバートラックにテスラ車初の機能

 マスタープラン パート3では、化石燃料の使用をなくすために必要な行動として6つのステップを示している(図2)。テスラは二酸化炭素(CO2)排出量の削減効果が大きい領域から着手しており、ステップ1「電力源を再生可能エネルギーに転換」とステップ2「クルマを電気自動車(EV)に切り替え」は実行済みだ。

図2 6つのステップで化石燃料のない世界へ

図2 6つのステップで化石燃料のない世界へ

ステップ3としてヒートポンプを位置付けた。図は、テスラのマスタープラン パート3を基に日経Automotiveが作成。(写真:テスラ)

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 ステップ1に関しては、家庭用の太陽光パネル「Solar Roof(ソーラールーフ)」の他に、再生可能エネルギーによって発電した電力をためる蓄電池を用意する。家庭用の「Powerwall(パワーウオール)」や電力事業者向けの「Megapack(メガパック)」などだ。

 テスラが生産・設置する蓄電池の規模は、2023年に入って一気に拡大した(図3)。同年第3四半期(7~9月)の設置規模は、前年同期比90%増の4.0GWhを記録。需要の拡大を受けて、テスラは米国外では初となるメガパックの工場を中国上海市に建設することを決めた。2024年中に稼働する予定という。

図3 テスラの蓄電池事業が急成長

図3 テスラの蓄電池事業が急成長

2023年に入り、蓄電池の生産・設置規模が一気に増えた。需要の増加を、部品不足の解消による生産拡大が後押ししたようだ。(出所:テスラ)

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 ステップ2のEVについては、多くを語る必要はないだろう。主力の「モデル3」「モデルY」を中心に、2023年は約180万台超を納車した。2023年11月に出荷を開始した新型EV「Cybertruck(サイバートラック)」には、ステップ1にも関係する外部給電機能「Powershare(パワーシェア)」を初搭載した。クルマを定置用の蓄電池として使うV2H(Vehicle to Home)や、他のEVへの給電、電化製品への電力供給などが可能。V2Hへの対応は、テスラ車としてはサイバートラックが初だ。

 これらに続くステップ3として「冷暖房をヒートポンプに切り替え」を位置付けたのは、テスラの決意表明と捉えていいだろう。自動車メーカーからエネルギー企業への転身に向けて、重要なピースを埋めていく。

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