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Wednesday, June 19, 2024

コラム:今度は人型ロボット、現実味失うマスク氏の皮算用 - ロイター (Reuters Japan)

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コラム:今度は人型ロボット、現実味失うマスク氏の皮算用

 6月18日、 米電気自動車(EV)大手テスラを率いるイーロン・マスク氏(写真)は、自分が見通しをたえず誤ることについて「病的なまでに楽観的なのだ」と、自身に寛大な態度で弁護している。カリフォルニア州ビバリーヒルズで5月撮影(2024年 ロイター/David Swanson)

[ニューヨーク 18日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米電気自動車(EV)大手テスラ(TSLA.O), opens new tabを率いるイーロン・マスク氏は、自分が見通しをたえず誤ることについて「病的なまでに楽観的なのだ」と、自身に寛大な態度で弁護している。
マスク氏はこれまで、自動運転タクシーの本格生産や、トヨタ自動車(7203.T), opens new tabを生産台数で追い越すことなど、「公約」を乱発してきた。より具体的な、航続距離が長かったり大型だったりする安価なEVを生産するスケジュールに関しては、あまりにも能天気だ。そして今度は人型ロボットによって、テスラの時価総額が現在の全世界のGDPの4分の1相当まで増加する可能性があると言い始めたのだが、全く理解に苦しむ。
マスク氏にとって幸いなことに、投資家は同氏を他社と比較した上で評価している。ビジブル・アルファによると、テスラ株は1年後の利益見通しの76倍で取引されているが、米自動車大手フォード・モーター株(F.N), opens new tabは6倍で、マスク氏が手掛けるのが単なる自動車メーカーではないと受け止められているのは明白だ。

しかしそれにしても、マスク氏が示した今回の計算は理解しがたい。マスク氏は先週、全世界では最終的に100億人が少なくとも1人1台のロボットを欲しがり、年間10億台が製造され、テスラの人型ロボット「オプティマス」が市場で10%のシェアを占めると予測した。価格を2万ドルに設定すれば1台あたりの利益は1万ドルで、年間利益は1兆ドルに達するというわけだ。

マスク氏は企業評価額を利益の20倍と控えめに設定したが、それでもロボット事業の市場価値だけで20兆ドル相当となり、さらに自動運転タクシー事業を5兆ドルと見込んだ。国際通貨基金(IMF)によれば、昨年の全世界GDPは約100兆ドルで、テスラのロボット事業の利益だけでこの1%に相当する計算だ。石油業界の巨人、サウジアラムコですら今年の利益の全世界GDP比は0.1%にとどまる見込みだというのにだ。

テスラの企業価値は、マスク氏が超楽観的な見通しを示したことで、かえって減少してしまった。テスラの株価は13日の定時株主総会の翌日、市場価値の2%を消失。マスク氏がオプティマスについて新たな見通しを示してもテスラの株価は下落するかほとんど動かないという、最近のパターンを踏襲した。

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シンプルなコンセプトの方が理解されやすい。マスク氏が最近、手頃な価格の自動車を世に送ると改めて宣言するとテスラの株価は12%急騰した。

問題はマスク氏の計算がどんどん荒っぽくなっていることだ。2027年までに米国内で販売される自動車の半分をEVが占めるというマスクの予測は大外れとなるだろう。テスラの「モデルS」の航続距離を1000キロに延ばすという目標は、実際にはその半分にとどまっている。ロボットに関する予測の見通しを30年までにして10%の割引率を適用するとテスラの株価は4425ドルとなるが、足元では200ドルを割っている。

こうした「計算ミス」は理屈上のもののように見えるかもしれない。だがますます珍妙さを増すマスク氏の計算は自動運転技術の早期実現など、根拠の乏しいアイデアが基になっているのだ。簡単な計算だけで十分事足りることもある。

●背景となるニュース

*テスラは13日に定時株主総会を開き、マスク氏に対する巨額の報酬プランと、法人登記を東部デラウェア州から本社のある南部テキサス州に移転する提案を賛成多数で承認。マスク氏は同社の時価総額が5兆ドルに達する可能性があるとするARKインベストメントの調査結果に賛同を示すとともに、自社開発した人型ロボット「オプティマス」によって機会が広がり、企業価値は20兆ドルないし25兆ドルに達する可能性があると述べた。 もっと見る

*テスラ株は翌日14日に2.4%下落した。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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