しかしそれにしても、マスク氏が示した今回の計算は理解しがたい。マスク氏は先週、全世界では最終的に100億人が少なくとも1人1台のロボットを欲しがり、年間10億台が製造され、テスラの人型ロボット「オプティマス」が市場で10%のシェアを占めると予測した。価格を2万ドルに設定すれば1台あたりの利益は1万ドルで、年間利益は1兆ドルに達するというわけだ。
マスク氏は企業評価額を利益の20倍と控えめに設定したが、それでもロボット事業の市場価値だけで20兆ドル相当となり、さらに自動運転タクシー事業を5兆ドルと見込んだ。国際通貨基金(IMF)によれば、昨年の全世界GDPは約100兆ドルで、テスラのロボット事業の利益だけでこの1%に相当する計算だ。石油業界の巨人、サウジアラムコですら今年の利益の全世界GDP比は0.1%にとどまる見込みだというのにだ。
テスラの企業価値は、マスク氏が超楽観的な見通しを示したことで、かえって減少してしまった。テスラの株価は13日の定時株主総会の翌日、市場価値の2%を消失。マスク氏がオプティマスについて新たな見通しを示してもテスラの株価は下落するかほとんど動かないという、最近のパターンを踏襲した。
シンプルなコンセプトの方が理解されやすい。マスク氏が最近、手頃な価格の自動車を世に送ると改めて宣言するとテスラの株価は12%急騰した。
問題はマスク氏の計算がどんどん荒っぽくなっていることだ。2027年までに米国内で販売される自動車の半分をEVが占めるというマスクの予測は大外れとなるだろう。テスラの「モデルS」の航続距離を1000キロに延ばすという目標は、実際にはその半分にとどまっている。ロボットに関する予測の見通しを30年までにして10%の割引率を適用するとテスラの株価は4425ドルとなるが、足元では200ドルを割っている。
こうした「計算ミス」は理屈上のもののように見えるかもしれない。だがますます珍妙さを増すマスク氏の計算は自動運転技術の早期実現など、根拠の乏しいアイデアが基になっているのだ。簡単な計算だけで十分事足りることもある。
●背景となるニュース
*テスラ株は翌日14日に2.4%下落した。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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