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Wednesday, May 13, 2020

【アジアインタビュー】 次のブームは「台湾夜市ゲーム屋台」に 日本・社会・事件 - NNA.ASIA

台湾夜市ゲーム研究者 三文字昌也さん

台湾発ドリンクとしてタピオカミルクティーが日本のみならず世界を席巻してはや数年。次のブームは「台湾夜市ゲーム屋台」かもしれない。日本で唯一の台湾夜市ゲーム屋台研究者、三文字(さんもんじ)昌也さん(27)は日本で夜市を復活させるという野望を抱く。

花園夜市のピンボール屋台。盤の下部の光っている列に玉を入れるシンプルなルール=台湾・台南市(三文字氏提供、以下同)

花園夜市のピンボール屋台。盤の下部の光っている列に玉を入れるシンプルなルール=台湾・台南市(三文字氏提供、以下同)

本業は建築と都市の設計ですが、東京大学大学院の都市デザイン研究室に在籍し、台湾夜市を学術的に研究しています。台湾夜市ゲームに熱中するあまり現地で遊ぶだけでは飽き足らず、攻略本を執筆して自費出版したり、高雄市のゲーム工場へ取材に行ってそのまま筐体を購入したりしました。日本や台湾の各地で開かれる数々のイベントにも出店しゲーム屋台を開いています。夜市ゲームはシンプルすぎて、人によっては「何が面白いの」と思われるかもしれません。一見ばかばかしく見えるゲームでも、実際に挑戦すると視点が変わる、なかなか奥が深いエンターテインメントですよ。

同じく花園夜市のエビ釣り屋台の風景。1回10台湾元(約36円)だが技術が必要

同じく花園夜市のエビ釣り屋台の風景。1回10台湾元(約36円)だが技術が必要

マージャンビンゴの様子。机の絵柄と同じ36枚のパイが裏返しで置いてあり、その山からいくつか選んで同じ絵柄の上に置く。リーチは出やすいが、なかなか当たらない

マージャンビンゴの様子。机の絵柄と同じ36枚のパイが裏返しで置いてあり、その山からいくつか選んで同じ絵柄の上に置く。リーチは出やすいが、なかなか当たらない

■大人も熱中する多彩なゲーム

台湾の夜市では食べ物屋台と並んで、レトロゲームの屋台が出ています。夜市ゲームは、ルールが単純なだけにゲームバランスが良く練られていて大人も熱中できるのが魅力です。夜市文化に親しんでいるからか、特別な日にだけお祭りがある日本とは違い、毎日夜市が開催されている台湾では小さな子の横でおじいちゃん達が本気でゲームを楽しんでいたりする。

日本の縁日でも良く見られる射撃や輪投げのようなものも多くありますが、台湾夜市らしい代表的なものといえばマージャンパイを使ったビンゴやピンポン玉を投げ入れるゲームでしょうか。釣ったエビをその場で焼いて食べられるエビ釣りゲームもあります。

少し変わったものでは、最近は数字を使った「寫數字(シエシューツ)」という比較的新しいゲームが熱いですね。全600のマスがある1枚の紙に1から600まで一つずつ順番に数字を書き入れるというもので、30分以内に全てのマスを埋めれば成功。書き損じや数字の重複がなければ景品がもらえます。諸説ありますが発祥は2011年の中国とも言われています。

一見、数字を書くだけで、とても簡単に見えますよね? ところが、一つもミスをしないというのはこれが実はかなり難しい。順調にいけば15分ほどで書き終わるはずなのですが、成功率は10人に1人いるかいないか。単純だけど意外に熱中してしまうもので、こんなゲームでもちゃんと商売になっているようです。

梧州街観光夜市の様子=台湾・台北市(NNA撮影)

梧州街観光夜市の様子=台湾・台北市(NNA撮影)

また、台の上に転がした酒瓶を釣り竿の先に付けた輪を引っ掛けて立てる「釣酒瓶(ディアオチューピン)」というゲームもあります。これも聞くだけなら何ということもなさそうですが、酒瓶が傾斜した板の上に置かれているのがミソ。大人でもそう簡単には起こせませんね。一気に持ち上げるのがコツですが、勢いがありすぎると板から落ちてしまうので成功するのは10人のうち1人ほどでしょうか。板から規定の回数以上落とすと失敗となってしまいますが、台の上にある限りは何度でも挑戦できます。

夜市の文化に出会ったのは大学2年生の時でした。初めての台湾旅行で台南市の花園夜市を訪れた際、昼間何もなかった場所にたくさんの店が出現し、多くの人を集めていることに衝撃を受け「こんな面白い場所があるのか」と感激しました。当時進路に悩んでいたこともあり、さっそく翌年には台湾に留学して、台南市を拠点に夜な夜な各地の夜市を巡り歩くようになりました。

夜市の中でも特に面白いのは、郊外で開かれる地域密着型の「流動夜市」です。聞きなれない言葉ですが、同じ場所で毎日開かれる固定夜市に対し、流動夜市は駐車場や空き地など市内の各所を曜日ごとに移動して開かれます。昼間と夜間の空間利用が異なる、興味深い都市デザインの事例です。

流動夜市は仮設屋台だから出店にかかる初期費用も少ないし、寫數字などはほとんど元手も必要ありません。少ない元手で何もない場所にたくさんの人を集められるというアイデアは、応用すれば自分が研究している都市計画のほか、空き地や公共空間の利活用といった諸問題の解決にもつながるのではと思っています。台湾夜市のエッセンスを学んで、日本の都市にも新しい形の夜市を創り出すことが自分の夢ですね。

<プロフィル>

三文字昌也(さんもんじ・まさや)

都市デザイナー・建築士、東京大学大学院工学系研究科の博士課程で都市デザインを専攻する大学院生でもあり、台湾夜市を学術的に研究している。初めて挑戦した台湾夜市ゲームは「ゴルフボール転がし」。傾いた板の上でゴルフボールを転がして黒や赤色のマスの上で止めるというゲームだが、難易度は非常に高い。「大の大人がムキになって遊んでしまいました」(三文字氏)。18年に台湾夜市を模したイベントを開催したのがきっかけで夜市ゲーム業者を始めたという。合同会社「流動商店」(東京都文京区)の共同代表として文京区内にゲストハウス兼居酒屋も運営。文中の攻略本は『台湾夜市遊戯大全』としてネットショップで販売中だ。

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<マニアフェスタ>

人気ウェブメディア「東京別視点ガイド」を運営する「別視点」(東京都中央区)が主催する、ディープなマニアを集めた即売会イベント。今年2月に開催された4回目には海外の珍キャラクタ―マニアや、台湾団地マニア、自作CMソング作家など117組が、通常ではお目にかかれないレアでコアな秘蔵アイテムを多数出品。対象への愛と魅力を全身で表現する。今回取り上げた三文字氏も「台湾夜市ゲームマニア」として出店した。

※特集「アジアインタビュー」は、アジア経済を観るNNAのフリー媒体「NNAカンパサール」2020年5月号<http://www.nna.jp/nnakanpasar/>から転載しています。

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