半導体不足が深刻化している。19日にはルネサスエレクトロニクスの那珂工場(茨城県ひたちなか市)で火災が発生。昨年秋以降の世界的な半導体不足に拍車がかかり、自動車生産への大きな影響は避けられない見通しだ。頻発するサプライチェーン(供給網)の寸断は産業のコメと呼ばれ、デジタル経済の要にもなる半導体の重要性を再認識させ、その確保が「経済安全保障」に直結する事実を浮かび上がらせた。
「半導体供給に大きな影響が出ると危惧している」
ルネサスが火災発生2日後の21日にオンライン上で開いた記者会見。柴田英利社長は苦渋に満ちた表情で声を絞り出した。
火災は19日午前2時47分ごろ、先端品を担う2階建ての建物「N3棟」の1階で発生した。従業員がメッキ工程で使う装置から煙が出ているのを発見。すぐに消防へ通報したが、周囲に燃えやすい樹脂が使われていたことから、鎮火に約5時間半かかった。
原因はメッキ装置への過電流が発生したためで、放火などの事件性はないという。ただ、過電流の発生原因や火災時に落ちるはずだったブレーカーが作動しなかった理由など、分かっていないことも多い。
もともと半導体は、昨年秋ごろから不足が目立っていた。
半導体各社は、米中貿易摩擦や新型コロナウイルス感染拡大で先行きの不透明感が増す中、「作りすぎ」を警戒して保守的な生産計画を立てていたとされる。ところが第5世代(5G)移動通信システムの普及や巣ごもりの浸透、テレワーク拡大などで、スマートフォンやパソコン、ゲーム機の需要が予想以上に増加。さらにコロナ禍で落ち込んでいた自動車の生産が急回復し、奪い合いの状況を呈し始めた。
しかも、2月中旬には米テキサス州を寒波と停電が直撃。韓国サムスン電子の半導体工場や自動車用半導体大手、独インフィニオンテクノロジーズの工場が停止し、いまだに生産を再開していない。
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