近畿大学医学部は、新型コロナの感染予防で使用したマスクに付着した細菌・真菌について調査した。 マスクに付着した細菌と真菌は、多くは無害な菌だったが、一部で有害な菌も検出されたことから、マスクは1日程度で交換することを推奨している。 また、有害な菌はマスクの外側で検出される頻度が高く、使用しているマスクの外側と内側を間違って装着することがないように注意が必要としている。 マスク着用により、新型コロナの感染を完全に防げるわけではないものの、感染リスクを減少できることが明らかになっている。 一方、マスクは飛沫の拡散防止には効果があるものの、夏の高温・多湿な環境では、熱中症のリスクを高める。 感染症対策と熱中症対策を両立することが呼びかけられている。
マスクに細菌などが付着 なるべく「1日で交換」
近畿大学は、109人のボランティアを対象にアンケートを実施、マスク使用の実態や生活スタイルについて調査するとともに、マスクに付着した細菌・真菌との関連について解析し、コロナ禍で習慣となったマスク着用について世界ではじめて解明した。 使用されていたマスクの種類は、不織布マスクが78%を占め、その使用者の75%は1日で使い捨てていたが、3日以上使用している人も14%いた。 マスクに付着した細菌と真菌は、多くが無害な菌だったが、一部で有害な菌も検出された。真菌には、肺炎や皮膚炎などの病気を起こすものや、食品に利用されるもの、カビ、酵母、キノコなども含まれる。 研究で検出された細菌・真菌の大部分は、通常病気を起こさない菌だったが、黄色ブドウ球菌、腐性ブドウ球菌、シュードモナス・ルテオラ菌、ケカビ、アスペルギルス、フォンセカエなどの、病気の原因となる菌も検出された。「外側と内側を間違えない」ことも大切
研究グループはさらに、細菌の数はマスクの内側で多い一方、真菌の数はマスクの外側で多いことを明らかにした。また、マスクの使用日数が長いほど、真菌の数は有意に増加したが、細菌の数は増加しないことも確認。 「マスクの継続使用には注意が必要であり、1日程度で交換することが推奨されます。また、有害な菌はマスクの外側で検出される頻度が高いことから、使用しているマスクの外側と内側を間違って装着することがないように気を付ける必要があります」と、研究グループでは注意を促している。 さらに、洗顔や化粧水の使用などスキンケアを多く行なっている人ほど、検出される細菌数は少なく、洗顔をしない場合は増加することも分かった。糞便に由来する菌は病原性をもつものが多いため、正しく洗浄できていない手でマスクを触ると、有害な菌が付着する可能性が高まるという。 研究は、近畿大学医学部微生物学教室の朴雅美氏を中心とする研究グループによるもので、近畿大学が推進している「"オール近大"新型コロナウイルス感染症対策支援プロジェクト」の一環として実施された。マスク着用は感染対策としてやはり効果的
マスク着用により、新型コロナのような呼吸器感染症を完全に防げるわけではないものの、飛沫などの吸入を防げ、感染リスクを減少できることが、カナダのマクマスター大学の研究で明らかになった。 「新型コロナの感染数が増加している場合、ほとんどの人はマスクを着用すれば、感染を完全に防ぐことはできないにしても、重症化のリスクを減少し、ひいては医療システムへの負担を大幅に減らすことができます」と、同大学数学統計学部のデビッド アーン氏は言う。 研究グループは、新型コロナの感染リスク、パンデミックの期間、感染数の増加率と時間、重症化リスクなどの要素をもとに、マスク着用が感染リスクにどれだけ影響するかを予測する数理モデルを作成した。 その結果、マスク着用を効果的に行うことで、新型コロナの拡大を大幅に遅らせ、感染拡大のピークを下げられ、重症化リスクを減少できることが明らかになった。とくに屋内や会食をする場面では、マスク着用は効果的としている。マスクは効果的なツール
2020年1月に新型コロナの感染拡大がはじまり、世界中に広まっていくにつれ、感染予防のためにマスクを着用する必要性について、多くの国の政策で過小評価されるようになった傾向がある。 研究グループは、新型コロナの拡大の初期には、多くの国で、マスク着用は医療現場以外では推奨されておらず、医療従事者へのマスク供給も不足していたことが、感染拡大に拍車をかけたと指摘。その後は、マスク着用が新型コロナウイルスのコミュニティでの感染を減らす効果的なツールであることが、多くの研究で指摘されている。 「屋内でマスクを着用することで、部屋にいる他人だけでなく、あなたご自身も感染から守られます。マスクにより感染を防ぐことは、部屋にはいない他のすべての人にも重大な影響を与えます。マスクを着用する価値について、あらためて考える必要があります」と、同大学アート科学プログラムのザカリー レヴァイン氏は言う。熱中症対策と感染症対策の両立が大切
一方、マスクは飛沫の拡散防止に効果があるものの、高温・多湿な環境では、熱中症のリスクを高める。 日本では、感染症に対策するために、屋外では、▼周りに人がいなかったり、▼人と十分な距離(2m以上)が保たれている場合は、マスクを外してかまわないとされている(熱中症環境保健マニュアル2022)。 屋内でも人との距離が確保できていて、会話をほとんど行わない場合は、熱中症予防の観点から、マスクを着ける必要はないとされている。 さらに、マスクを着用しているときは、水分補給がしづらくなるが、のどが渇いていなくてもこまめに水分を補給することが推奨されている。 今年の夏も猛暑が続いており、感染症対策と熱中症対策を両立するのは難しいが、1人ひとりが感染拡大防止のためにできることを実践することが大切だ。 近畿大学医学部Bacterial and fungal isolation from face masks under COVID-19 pandemic (Scientific Reports 2022年7月18日) Hidden benefit: Facemasks may reduce severity of COVID-19 and pressure on health systems, researchers find (マクマスター大学 2022年5月4日)
Face masking and COVID-19: potential effects of variolation on transmission dynamics (Journal of The Royal Society Interface 2022年5月4日)
【特集】新型コロナウイルス感染症
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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