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Wednesday, December 13, 2023

イーロン・マスクは「世界の終末」にサイバートラックで立ち向かおうとしている - Business Insider Japan

kuebacang.blogspot.com

彼は、最高の工場生産技術で作られた、この恐ろしく複雑な電気駆動のトラックは、核戦争や海面上昇、世界規模のパンデミックなどで世界が崩壊した後も走り続けるだけでなく、実際に何かの役に立つと考えている。少なくとも彼の考えでは、サイバートラックは、もはやサイバーでなくなった(=現代文明が崩壊した)後でも、われわれを望む場所に連れて行ってくれる。

これは、マスク氏と、彼がもう間近だと考えている世界の終末について重要なことを物語っている。

どうやらマスク氏は、もし世界が終わりを迎えたとしても、自分とおそらくサイバートラックオーナーは、ライトが輝き、冷えたシャンパンも楽しめる装甲ドームのような居住区域の中にいて安全だと信じているようだ。残りの(サイバートラックのオーナーではない)ダメな私たちはそうもいかない。マスク氏が所有するX(旧Twitter)ではないSNSには、こんな投稿があった。

「マスク氏の考える世界の終末は普通の人々に影響を与えるものであって、彼には影響を与えない。彼は十分にリッチだから」

だが、マスク氏の未来観はこの言葉以上にディストピア的だ。サイバートラックは本質的には世界が終末を迎えた後の「観光用」に作られている。銃で武装した装甲ドーム型の居住区域を出て、病気が蔓延する悲惨な都市でショッピングしたり、放射性廃棄物の向こうに広がる虹色に輝く有毒なビーチでちょっとしたグランピングをするための車だ。

そうした場所に行くことは楽しいだろう。なぜなら、サイバートラックを所有していることは、そうした場所に住む必要がないほどリッチなことを意味するからだ。マスク氏が描く世界の終末を信じるなら、誰かが必要なインフラを整備してくれることも信じる必要がある。そうした人たちは「あなた」のために働くと。

マスク氏の言葉が本心かどうかを見極めることは難しい。だが彼は、常に世界の終末を思い浮かべている。マスク氏は、恐竜を絶滅させたような小惑星の衝突が再び起こるのは「時間の問題」(潜在的には真実)、出生率の低下は「地球温暖化よりも文明にとって大きなリスク」(真実ではない)、サンフランシスコがゾンビに襲われたように見えるのは「覚醒したマインド・ウイルス」が理由(まったく違う)と主張している。

彼がロケット企業スペースXを設立したのは、地球が膨張する太陽に飲み込まれるような地球規模の大惨事(少なくとも50億年は起きない)が起きたときの「バックアップ」として、人類を他の惑星に移住させたいと願っているからだ。

だが、最近のマスク氏が一番心配している世界の終末は、AI(人工知能)が世界を征服し、人類を絶滅させるほど強力になることだ。だから彼は、人間とAIの融合を視野に入れたブレイン・コンピューター・インターフェイス企業のニューラリンク(Neuralink)を作り、Open AI(オープンAI)を共同創業した。だがOpenAIは皮肉にも、世界を征服し、人類を絶滅させるほど強力なAIを作り出すことに軸足をシフトさせた。

サイバートラックで終末に立ち向かえるのか

こうしたマスク氏の世界の終末についての考え方は、マスク氏が好む長期的な考え方、つまり遠い未来に数兆人もの命を救うことができるなら、今やりたいことはほぼ何でも許されるという考え方とうまく調和している。だからこそ、サイバートラックは終末の時代の究極のステータスシンボルなのだ。もし多くの人がゾンビになって誰かを食べている間に6万1000ドル(約915万円、1ドル=150円換算)のピックアップトラックで走り回る終末世界を正当化したいなら、サイバートラックはあなたのための車だ。

確かに、核戦争後に巨大建造物のワンフロアに詰め込まれた負け犬たちは、彼らの横を快適に通り過ぎていくあなたに嫉妬するだろう。だが、彼らは生き残ることしかできない。あなたの仕事、あなたの使命は、人類の文明を存続させること。そのためには、装甲ガラス、2500ポンド(約1トン強)の積載量、「宇宙空間のように静かな」インテリアを備えたものが必要だ。

だが皮肉なことに、もしあなたが本当に世界の終末に相応しいもの——数百万人もの死傷者を出し、風景を非人間的で荒涼としたものに変え、自由を約束しながら恐怖をもたらす悪魔のような取引から生まれたものを望んでいるなら、それはもうすでに存在している。トラックだ!

テスラのサイバートラックが発表されるちょうど2週間前、米国道路安全保険協会(The Insurance Institute for Highway Safety)は、長年言われてきたことを裏付ける新しいデータを発表した。トラックは小型車に比べて、ぶつかった人を死亡させる確率が45%も高くなる。トラックが多い場所では歩行者の死亡事故が多い。道路が多く、公共交通機関が少ない都市も同様だ。

2009年以降、アメリカの歩行者死亡者数は80%上昇、これはトラックがサイズアップし、販売台数が増えていることが大きく影響している。トラックで毎日20人が亡くなっている。さらにトラックは大気汚染、森林破壊、地球温暖化を加速させている。トラックがもたらす黙示録は今、起きているのだ。

20世紀初頭、自動車が一般のアメリカ人の手にも届くものになった時のセールスポイントは「移動の自由」だった。だが、トラックはマーケティングを変えた。巨大なトラックは、ますます牙をむく世界に備えるための、繭のような安全性を象徴している。

サイバートラックは、この考え方を論理的に推し進め、笑えるほど極端にしたものだ。装甲ドームの中に駐車するのではない。装甲ドームそのものなのだ。そして、このセールスポイントを定着させるために、サイバートラックの営業担当者たちは、実際に世界がますます牙をむくようになっていると私たちを信じ込ませなければならない。皆が銃を買えるようにしてから、防弾トラックを売ればいい。

多くのSF作家たちは、あらゆるディストピアは必然的に他の誰かのユートピアだというアイデアをさまざまな形で表現してきた。宇宙船を作り、火星移住を提唱し、政治的に右寄りな地球上で最もリッチな男が、終末感ただよう雰囲気の中で何に乗るのがいいかよく考えろと言ってきたら、あなた自身は終末の日をどうやって乗り切るおつもりですかと尋ねてみるといいだろう。

私はマスク氏以上にSF好きなので、サイバーパンク(マスク氏の馬鹿げたトラックが属するジャンル)が、不平等に押しつぶされた世界におけるテクノロジーの暴走の危険性を描いていることを理解している。サイバーパンクの生みの親のひとりと言われるゲームデザイナーのマイク・ポンスミス(Mike Pondsmith)氏の言葉を借りよう。

「サイバーパンクは警告であって、マニュアルではない」

それに、世界が崩壊した後に相応しい乗り物は、大きく、不格好なトラックではない。自転車だ。軽くて、信頼性が高く、修理や部品調達が簡単で、荷物を積むことができ、あなた以外の動力は必要としない。

そして、世界の終わりを実際に乗り切ることができる——あるいは、できれば防ぐことができるのは、鋼鉄製の戦車を運転することではない。協力することだ。協力は人類が昔から持っている超能力だ。ただし、使うことを忘れなければ。本当の装甲ドームは、ともに歩む仲間たちだ。

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