ひげ脱毛も
「鏡に映ったマスクなしの顔がこわばっているように見えて、ショックだった」
大阪市内の自営業女性(60)は最近、鏡で自分の素顔を見た時の感想をそう話す。マスクをすれば顔の下半分が隠れるため、この約2年間は他人の視線を意識しなくなっていた。「外せるようになった時、衰えたというイメージを持たれたくない」と手入れに励み始めた。
コロナ禍で長く消費が低迷していた化粧品に回復の兆しがある。調査会社のインテージが発表した、今年1~6月に量販店で売り上げを伸ばした日用品ランキングによると、口紅が前年同期比40%増で4位、頬紅(チーク)が同13%増で13位に入った。行動制限が3月に解除され、外食などでマスクを外す機会が増えたことや、色が落ちにくい商品がヒットしたことなどが影響しているとみる。
大丸梅田店(大阪市北区)のコスメブランド「コスメデコルテ」の売り場には、夏に発売されたリキッドルージュを始め、51色展開の口紅などが並ぶ。ローズや深みのあるブラウンといった映える色が人気で、色移りしにくかったり、トリートメント効果があったりと、付加価値のあるタイプが売れ筋という。
担当者は「口紅で気分を高めたいという方が増えている。マスクをいつ取っても大丈夫にしておきたい、という思いもあるのでは」と話す。
資生堂は6月から、マスクの「あり・なし」のどちらにも対応する「2Wayメイク」を提案する。チークの上にフェースパウダー、さらにチークを重ね塗りすると、マスクをしていても崩れにくく、外した時も血色よく見せることができるという。
男性にとっての関心事はひげの手入れだ。全国でエステサロン「MEN’S TBC」を展開するTBC広報室は「ひげ脱毛のニーズが高まっている」と言う。マスクで口元が隠れているため、ひげそりの頻度が減り、肌荒れに悩まなくなったという人は少なくない。マスクを外す場面に備えて、再び毎日そらなくても済むように脱毛に踏み切るケースが目立つという。
表情筋を鍛える
顔の筋肉を鍛えて、生き生きとした表情を取り戻そうとする動きもある。
「口角を手で持ち上げたら、手を離してそのままキープ」。7月に大阪市内で開かれた表情筋トレーニング講座。講師のよしいまみさんの掛け声に、50、60歳代の男女7人が鏡に向かって、口や頬を動かしていた。
よしいさんは表情筋研究家、間々田佳子さん考案の「コアフェイストレーニング」認定インストラクターとして活動する。マスクの息苦しさで口が半開きになって口周りのたるみが出たり、大きな口を開けて笑う機会が減ったことで頬の筋肉が衰えてほうれい線が目立ったりしているという。同市の女性(57)は半年ほど講座に通う。「顎のラインがすっきりしたと言われて、自信が付いた」と喜ぶ。
表情筋は口周りや頬などに20種類以上あり、よしいさんは「効果を得るには細く長く続けることが大切。正しい知識でトレーニングしてほしい」と助言する。
マスク生活で、自分の顔への関心がいったんは薄れた人々が、再び向き合い始めている。マスクと顔の関係は、これからも変化し続けるだろう。
(満田育子、岡本久美子が担当しました)
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