【ロンドン=篠崎健太】英イングランド銀行(中央銀行)のベイリー総裁は26日、外国為替市場で通貨ポンドが急落したことを受けて臨時の声明を出し「インフレ率を中期で2%の目標へ持続的に戻すため、必要に応じて金利を変更することをためらわない」と強調した。「金融市場の動向を非常に注意深く監視している」と述べ、ポンド安をけん制した。
ポンドは同日のアジア市場で一時1ポンド=1.03ドル台後半まで下げ、対ドルで過去最安値を更新した。英国債も大きく売られ、2年物の利回りは前週末より一時0.6%近く上昇(債券価格は下落)して4.5%台後半と、2008年9月以来の高さになった。
市場が動揺した背景には、トラス政権が23日に打ち出した減税を柱とする経済対策が、財政やインフレ状況の悪化につながることへの懸念がある。
ベイリー氏は政府の経済対策がインフレに与える影響や、ポンド相場の下落について、次回の金融政策委員会で検証すると説明した。政府の姿勢については「持続可能な経済成長に対するコミットメント(約束)を歓迎する」とコメントした。
一方で英財務省は26日、経済対策の「実施に関する追加情報」と題する声明を発表した。その中で11月23日に中期の財政計画を公表すると明らかにした。「中期的な債務残高の国内総生産(GDP)比の低下を確実にする財政ルールの詳細を定める」としており、市場安定を図る狙いで声明を出したとみられる。
イングランド銀行総裁の市場動向をめぐる声明は、最近では16年6月に英国民投票で欧州連合(EU)からの離脱が決まってポンドが急落した際や、20年3月に新型コロナウイルス禍への対応で主要中銀がドル供給策を拡充したことを受けて出された例がある。今回も市場の動揺を鎮める狙いがあるが、ロンドン外為市場では声明発表後にポンドが下げ幅を再び広げる反応をみせた。
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