新型コロナウイルスの感染対策で、13日からは基本的に個人の判断に委ねられるマスクの着用。亀田総合病院(千葉県鴨川市)の感染症科部長、地域感染症疫学・予防センター長の細川直登さん(56)=写真=は、3年間コロナ対応の前線に立った経験から同病院報3月号で、防御を下げないよう関係者に注意を呼び掛けている。専門家としての考えを聞いた。(山本哲正)
−「個人の判断」となる中で、厚生労働省の専門家組織は「感染防止の五つの基本」に「その場に応じたマスクの着用」を挙げた。
個人の判断と言われてもお困りでしょう。「マスクを着けなくていい」と思うのは誤解です。過去三年間の知見でコロナの流行を抑える有効な方策が明らかになり、その一つが皆でマスクを着用すること。流行中はマスクを着けた方がよいが、流行状況の判断が個人には難しい。不親切です。
−マスクを着用するかしないかを巡って市民同士で摩擦も心配される。
マスクについては「着ける、着けない」の二元論で語らず、「必要な時には着ける」と考えてほしい。
必要な時とは「感染しているか把握できない人と、飛沫(ひまつ)が届く二メートル以内で会話をする際、もしくは偶然そのような機会が起きる可能性がある時」です。
新型コロナは発症前からも、無症状でも人に感染する特徴があり、インフルエンザのように「せきをする人はマスクを」だけでは防げません。自分が感染者かもしれないからマスクで飛沫が飛ぶのを防ぐのが医学的な理由。感染者も感染してない人も全員マスクをするのがリスクを一番減らす良い方法です。
人けのない浜辺を散歩するのにマスクは不要。スーパー店内や人混みでは、全員マスクでリスクが下がる。病院などでは引き続きマスク着用が継続される。
防御のレベルは、流行状況に合わせて上げ下げすることになる。岸田首相がマスクを外すと言い出した第八波の真っ最中よりは、今の方が相対的に安全だが、「周囲に感染者が存在しないほど流行が収まればマスクを外しても安全」と考えてよいと思います。
−感染症法上の位置付けが現在の「二類相当」から、五月八日に季節性インフルエンザ並みの「五類」に引き下げられれば「診療する病院が増えるのではないか」と期待する声もある。
恐らく、そうはならない。今でも二類の指定病院以外で新型コロナの診療をしている病院は多数ある。診療していない医療機関は、患者の動線や診療する部屋などで感染対策上の問題を解決できていないケースが多いと思う。五類になったとしてもウイルスの性質は変わらず、感染対策が突然できるはずもない。
むしろ、今まで通常の医療を制限して新型コロナ患者を受け入れてきた高度な機能の病院で、本来の高度医療を行うために新型コロナ患者の病床を縮小していく可能性がある。
第九波で、受け入れ先が減少する一方でマスク着用に誤解が広がって防御が下がり感染者が増えるとするなら「覚悟の第九波」になると思う。
<新型コロナと亀田総合病院> 国の要請で2020年1月29日、中国・武漢市から政府チャーター機で帰国した邦人を、勝浦市の「勝浦ホテル三日月」が受け入れた。2月13日まで191人が滞在。同院医師と看護師らが24時間態勢で健康管理に当たった。2月に院内に新型コロナ対策本部を置き、4月には人工呼吸器を必要とする重症患者の受け入れに対応するチームが発足。22年5月には感染症疑いの透析患者を受け入れられる「G棟」が完成した。コロナの確保病床は最大37床。昨年12月までの重症入院患者受け入れ数は520人。発熱外来受診は1万4360人。
関連キーワード
おすすめ情報
からの記事と詳細 ( <新型コロナ>マスク「個人判断」でどうする 亀田総合病院・細川直登さんに聞く 「着けなくていい」と思うのは誤解 ... - 東京新聞 )
https://ift.tt/eO3HG1a
No comments:
Post a Comment