看護師などスタッフのマスクの色を日勤、夜勤で変えることで、残業時間の削減を実現した民間病院がある。忍者の町で知られる滋賀県甲賀市の仁生会甲南病院(199病床、従業員424人)。厳しい経営が求められる民間だが、マスクの色を変える経費はゼロ。残業時間削減だけではなく、「夜勤明けスタッフに『お疲れさま』の声かけがしやすくなった」など働きやすい環境づくりにも一役買っているという。
価格は同じ
「日本看護協会の先進事例報告書でユニホーム2色制の取り組みが紹介されており、興味を持った。日勤者と夜勤者を区別化することで勤務終了者がはっきりすると。ただ、ランニングコストがかなりかかるのではと悩んだ」
甲南病院の広瀬京子看護部長(57)は振り返る。背景には医師や同僚看護師が勤務終了者に指示や声かけをし、残業時間数が増えるという全国の医療現場が抱える問題がある。
昨年12月の同病院看護部の協議では、「ユニホームがだめなら腕章を付ければ」「(スポーツで使うベスト状の)ビブスを着用すれば」などの案が出た。ただ、普段と違うことをすれば定着に時間がかかり、手間も増える。そのときに出たアイデアが、マスク2色制だった。
メーカーに確認すると、色を変えても価格は同じ。マスクは毎日着用しているので、現場の努力も不要ですぐに定着する。経営側の判断も早かった。今年1月16日、看護師を始めとしたスタッフで一斉に日勤者、夜勤者のマスクの色変更をスタートさせた。
全病棟で減少
日勤者のマスクは水色、夜勤者のマスクはオレンジ色。朝夕の病棟では、看護師、介護士など水色マスクのスタッフとオレンジ色マスクのスタッフが患者のデータなどを確認しながら引き継ぎをしていた。
まだ、マスク2色制導入4カ月余りだが、効果は数字で表れている。
一般、療養計4病棟の看護師(71~88人)の合計残業時間は、1月16日~2月15日の1カ月間が310・0時間。昨年同時期は503・1時間だった。同様に2月16日~3月15日は257・9時間(昨年382・3時間)、3月16日~4月15日は291・0時間(同514・6時間)、4月16日~5月15日は175・2時間(同439・9時間)だった。
「昨年と比較するとベッド稼働率の低下もあり、すべてがマスク2色制の効果とは言い切れない」(広瀬看護部長)といい、詳しい要因分析が必要というが、全病棟で看護師の残業時間が減少しており、効果は確実にあったといえる。
働きやすい環境へ
「夜勤者の把握がしやすく、わかりやすい」(医師)、「一目でわかるので、早く帰れるようにと声かけしやすい」(看護師長)、「やむを得ず残業していたが、医師から『帰れるか』と声をかけてもらった」(看護師)などの理由で残業時間が減少したとみられる。
さらに、マスク2色制の効果は残業時間削減にとどまらなかった。
一般病棟の沢友美病棟師長(47)は、「一目でわかるので、時間管理がしやすいのはもちろんのこと。それだけでなく、医師から『お疲れさま』などとスタッフにねぎらいの言葉もかけてもらえる機会が増えた。みんな、喜んでいる」と話す。
自身も内科医の古倉みのり理事長(57)は「看護師不足は深刻だが、地域医療存続のために踏ん張りたい。その踏ん張りの大きな力となるのが働きやすい環境づくり。これまで培ってきた業務改善の風土定着が今回のようなマスク2色制の秘策につながった」と話していた。
ユニホーム2色制は定着
公益社団法人日本看護協会が実施する「看護業務の効率化先進事例アワード」で「2019年度最優秀賞」を受賞したのが、一般社団法人熊本市医師会熊本地域医療センター(熊本市)のユニホーム2色制だった。
「引き継ぎ可能な業務による残業が多いという課題を、日勤と夜勤の勤務者を可視化することにより、一気に解決した」と同協会の森内みね子常任理事は評価。「この受賞後、令和4年時点で100施設以上がユニホーム2色制を導入していると聞いている」と話す。
ただ、甲南病院の秘策であるマスク2色制は「事例を持ち合わせていない」という。(野瀬吉信)
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