【ロンドン=篠崎健太、ヒューストン=花房良祐】英石油大手シェルは28日、ロシア極東の石油ガス開発事業「サハリン2」から撤退する方針を発表した。ロシアの国営ガス大手ガスプロムとの合弁を解消し、共同展開してきたシベリアのサリム油田などの権益からも引き揚げる。ロシアのウクライナ侵攻を厳しく批判し、事業を続けるのは困難だと判断した。
サハリン2はサハリン沖の大規模な資源開発事業で、ガスプロムが約50%、シェルが約27.5%出資している。ほかに日本の三井物産が12.5%、三菱商事が10%それぞれ参加している。液化天然ガス(LNG)の供給元として日本のエネルギー安全保障上も重要で、日ロ経済協力の象徴的な存在だ。
日本の政府系金融が融資し、プラントの設計・建造を千代田化工建設などが手掛け、2009年にロシア初のLNGプラントとして稼働を開始した。シェルが撤退を早期決断したことで事業に出資する三井物産と三菱商事の対応が焦点となる。
シェルのベン・ファン・ブールデン最高経営責任者(CEO)は声明で、ロシアのウクライナ侵攻について「欧州の安全保障を脅かす無意味な軍事侵略行為だ」と非難した。ウクライナで人命が失われていることに衝撃を受けていると語り「私たちは傍観することはできないし、そうするつもりはない」と強調した。世界各国の関係当局と協議して対ロ経済制裁を順守しつつ、エネルギー供給や事業への影響を精査する。
サハリン2のLNG年産能力は日本の輸入量の1割強に相当する約1000万トン。うち5割をJERAや東京ガスなど日本の電力・ガス会社8社が長期契約で調達している。
LNGプラントから日本、韓国、世界最大のLNG消費地の中国に近いのが特徴。サハリンから北東アジアへのLNG船は数日で到着する。一方、中東のカタールからは2週間以上、米国からは3週間以上かかる。
シェルはガスプロムと手掛けてきた他のロシアでの合弁事業も打ち切る方向だ。ともに同社と50%ずつ出資するサリム油田と、北極圏のギダン半島の資源開発事業からも撤退する。最大10%の資金拠出を約束していた、ロシアと欧州を結ぶ天然ガスの新たなパイプライン「ノルドストリーム2」への関与もやめる。
シェルが2021年末時点で固定資産として計上したロシア合弁事業の簿価は総額約30億ドル(約3450億円)で、撤退により損失が出る見込みだ。
前日2月27日には英BPが2割弱保有するロシア石油大手ロスネフチ株を手放し、同国での資源開発ビジネスから事実上撤退すると表明したばかり。トラック大手の独ダイムラートラックホールディングもロシア商用車大手カマズとの合弁事業凍結を決めるなど、欧州では軍事侵攻をやめないロシアとの関係を根底から見直す動きが急加速した。日本企業も対ロシア事業継続の是非について判断を迫られている。
からの記事と詳細 ( 英シェル、「サハリン2」撤退へ ガスプロム合弁解消(写真=AP) - 日本経済新聞 )
https://ift.tt/SstYypm
ビジネス